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(旧)一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章3.4『VS魔女』編
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物語No.93『少女の本懐』

 少女は叫んでいた。

 あらゆる魔法を行使し、異世界を破壊の渦に飲み込んだ。


 異世界の各地から悲鳴が響く。

 魔女ーー愛六によって世異世界は終わろうとしていた。


 魔女の真実を知った三世らは、戦う気力を失い、宙に浮かぶ魔女を呆然と眺めていた。


「どうして……どうしてお前は世界を壊す」


 三世は頭を抱え、問答する。

 愛六が行う破壊に思考を巡らせるが、答えは何も思い浮かばなかった。


「お前は俺たちが原因でこの戦いを始めたって言うのかよ……。そんなのってありかよ……」


 琉球は苦悶の表情で涙を流した。

 これまでの愛六との日々を回想し、思い出が脳裏を駆け巡る。


 だが愛六は止まらない。

 どれだけ二人が涙を流そうとも、彼女は止まらない。



 彼女は無慈悲に世界を終焉へ誘う。



 だが、二人の少女は止まらない。


「三浦に飛行魔法を付与」


 百は真実を呟く。

 百の潜在能力により、三浦は飛行魔法を獲得した。

 三浦は両手に短剣を握り締め、愛六へ飛ぶ。


「三浦、お前じゃ私は止められない」


 愛六は無数の刃を愛六の周囲に出現させた。それは各地で散った冒険者の武器だ。


「魔法によって生成した武器であればお前には効かないかもしれない。でもね、ただの武器ならお前は死ぬのよ」


 刃が雨のように三浦へ降り注ぐ。

 百が潜在能力で刃を消滅させようと口を開く。だが愛六はさせまいと、百を巨大な壁で閉じ込めた。


「お前は邪魔なのよ」


 百は壁を潜在能力で破壊しようと、その間に三浦は刃で死ぬ。

 降り注ぐ無数の刃を短剣で弾くが、受け止めきれず、右腕や横腹に被弾した。それを機に、無防備な身体へ次々と刃が突き刺さる。


「三浦友達、さようなら」


 刃で埋め尽くされた三浦は力を失い、落下する。

 潜在能力で壁を壊したばかりの百の目には、血に染まった三浦の姿が映る。


「三浦ちゃああああん」


 即座に真実が駆け寄る。

 だが愛六は無慈悲に貫く。


 ギルド師団長の真実に、百の潜在能力は効果を示さない。

 結果、黒い稲妻が真実の心臓を槍のように貫いた。


「誰も、私を倒すことはできない。私は最強の主人公」


 愛六の圧倒的な強さに誰もが戦慄した。


「あら、あなた、無防備じゃない」


 愛六は百を見て不敵に微笑む。

 百は愛六が行う行動を理解できた。だからこそ自分の命はここまでだと直感した。

 案の定、彼女は瞬間移動により百の真正面に移動した。


「お前さえいなきゃ私の魔法が世界を支配する」


 彼女は右手に握り締める刃を百の心臓に振り下ろす。

 誰も、彼女を止めることはできなかったーー


「ーー違う」


 はずだった。

 だが愛六の刃が貫いたのは百ではなかった。

 瞬間移動でもしれない限り、百を庇うことができない距離があったはず。それを補う潜在能力を持つ者はいた。


「……っ」


 潜在能力『交代(バトンタッチ)』により百と三世の位置は入れ替わっていた。

 愛六の刃が貫いた先は、三世の心臓。


「なあ愛六……。この状況で、誰が一番主人公に見える」


 血を吐きながら、三世は訴えた。


 愛六は予想もしていなかった。

 愛六の瞳を、滴が染める。

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