物語No.91『主人公VS魔女』
三世、愛六、琉球、三浦、百の五人は魔女と対峙しようとしていた。
誰も弱音は吐かず、立ち向かおうとする。
「でもね、まずは私を倒す前にそこにいるモンスターたちを倒して見せなさい。まあ、あなたたちには無理でしょうけどね」
モンスターたちが三世らへ襲いかかる。
「私がいることを忘れているの? ねえ、エンリちゃーん」
百は無邪気に笑って魔女を煽る。
そしてある言葉を発する。
「この場にいるすべてのモンスターは消失する」
百の一言で、星九下位のモンスターも含め、すべてのモンスターが跡形も残さず消失した。
たった一言言葉を発するだけで、戦況は一転する。
それが百の潜在能力。あらゆる嘘を現実に変える能力。
「やはり……お前の能力はうざいな」
「だろ。今度はお前に行くよ」
百は勢いづき、魔女にケンカを売る。
「やってみなさい。その前にあなたを殺すわ」
魔女は瞬間移動により百の頭上に移動した。それと同時、百は叫ぶ。
「私たちに魔法は効かない」
その嘘は魔女にとって天敵となる存在を一気に四人も生み出した。
だが魔女は最初から魔法ではなく武器でとどめを刺そうとしていた。魔女の右手に握られる刃は百を確実に仕留めようとしていた。
「あなたは命に関することに嘘はつけない。だから死ねば終わりよね」
「私は終わらないさ」
百は魔女の刃が振り下ろされるにも関わらず、平然としていた。
疑問に思ったのも束の間、三世と琉球が両脇から刃を振るって魔女へ致命傷を与えようとしていた。魔女は瞬間移動によって即座に回避した。
「私の動きを読んだとでも?」
「お前の動きなんか簡単に読めんだよ」
三世は威勢よく吠える。
「あなたが一番不快なのよ。最初はあれだけ逃げていたくせに」
「それでも友達が気付かせてくれた。僕に勇気を与えてくれた。だから前に進み続けるんだよ」
三世は魔女にも堂々と張り合っていた。
魔女は魔法が効かないため、不快感を募らせる。
(瞬間移動の多用で奴らを翻弄し、隙ができたらそこへ叩き込む。それだけでこの戦いに終止符を打てる)
魔女は黙考する。
敵の厄介さを十分に承知しているからだ。
「やっぱあの瞬間移動がある限り魔女は討てないな。百、魔女の魔法を使えなくすることはできないのか?」
「ごめん無理。私の潜在能力が人へ影響するとしたら、私が好意を抱いている人物だけ。私は魔女に干渉できない」
魔女はそれを聞き、勝機ありと微笑む。
「まあそうよね。あなたは過去に人を消してる。人に干渉したいとは思わないわよね」
「いや、そうじゃない」
魔女は瞬間移動により百の周囲へ転移するも、三世と琉球が剣で応戦する。
厄介な妨害によって魔女は迂闊な攻めをできない。
左腕があれば戦いのレパートリーは増えたが、今はなく、血を流しすぎたせいで頭も最大限には回っていない。
「魔法を無効化されたのが最悪だわ。それさえなければあなたたちなんて瞬殺なのに」
「魔法がなきゃ俺たちを討てないのか。お前は」
「だからあなた、ムカつくのよ」
三世に対し、魔女は無性に腹を立てていた。
魔女が上手く動けない中、しいなと銀冰を遠くへ避難させていた愛六と三浦が刃を構えて戻ってくる。
百を仕留めることは尚更難しくなった。
と、誰もが思った。
だが魔女はこの時、なぜか笑ったのだ。
「なんだ?」
三世は不審に思った。
百の身に何かあったのではないか、そんな疑念が過り、視線を百に向けた。
三世は瞳に映った光景に驚愕し、目を見開き、唖然とした。
「何をしている……!?」
この時、暦はあることを思い出していた。
勇者から受けた伝言。
三浦を接続者狩りであると密告した人物がいた。勇者はその人物が誰かを突き止め、その人物について警告するよう訴えていた。
同じ瞬間、三世もまた不寝の言葉を思い出していた。
不寝は、三世、愛六、琉球、三浦、百の中に魔女がいると言った。
三世は直感した。
彼女がーー魔女であったのだと。
百へ近づく足。
その正体は、刃を握り締める右腕を百に振り下ろそうとしていた。
「どうしてお前が……!?」
刃を振り上げた彼女ーー愛六の刃が今、百へ振り下ろされた。