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(旧)一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章3.4『VS魔女』編
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物語No.88『再生』

 勇者の首に浮き出た血の線、それは一周し、血が噴き出した。


身代わり人形は死んだ(ストローマンデッド)


 血は収まることを知らず、流れ続けている。


「この魔法、一度私も死ななきゃいけないから嫌いなのよね。それに、最悪勇者に魔法を抵抗(レジスト)される可能性があった」


 だから勇者が魔力を消耗し、疲弊しきった頃を狙った。

 最悪を想定しつつ、最悪を生まないための工夫をした。

 打てる手は全て尽くしたと見せかけ、最悪自分の命を犠牲にするかもしれない手法で勇者に攻撃を仕掛けた。おかげで右腕を失ったが、それでも魔女は自分の命と引き換えに相手の命を奪う魔法があるという可能性を勇者からできる限り消した。


 血が全身を埋め尽くした頃、勇者は浮力を失い、炎に包まれた大地にうつ伏せで倒れた。


「死んだ……?」


 勇者は倒れたものの、死んだという確実な証拠を得るまでは安堵しない。

 魔女の瞳はあらゆる情報を視覚情報として認識することができる。

 魔女の瞳が映し出す事実、それは勇者が死んだということ。


「フフゅ。勇者が死ねば終焉は確定する。そうよね」


 魔女は笑いが止まらなかった。

 この上ない笑みが込み上げてくる。


「おっと、ここで油断をしては駄目よね。左目を失った時のように、またあの槍だけ少年に邪魔されちゃうわよね」


 魔女は周囲に瞳を展開する。

 見えるのは、稲荷、しいな、銀冰を連れて向かってくる暦の姿だった。


「あなたは邪魔よ。早く死んどきなさい」


 魔女が放つ稲妻が暦を狙う。

 だが暦は槍を稲妻にかざすだけで掻き消した。


「あらゆる理を崩壊させる。あなたって本当に嫌いだわ」


 魔女の表情は歪む。

 殺意に満ちた表情は災厄そのものであり、ひとたび魔法を放つだけで星一つが終わる可能性を秘めている。


「私の身体能力を無限強化。そして、」


 魔女は勇者が使用していた剣を掴む。

 だが、剣が魔女を拒んだ。

 魔女の右腕は捻れ、歪んだ。


「な、何よこれ」


「今だ」


 暦は魔女に槍を投擲。気が動転しつつも、読んでいた魔女は顔を傾けるだけで回避。


「そんなことより、この剣は一体……」


 暦が投げた槍は半回転し、暦の手もとへ戻ろうとしていた。だが魔女と剣の間を通った瞬間、剣と槍が共鳴した。

 剣と槍は交差し、回転する。


「今度は何よ!?」


「ボクの槍が!?」


 魔女と暦は状況を理解できず、騒然とした。

 だが、それを知る者は全て見ていた。


「終わりの樹から生まれた槍と、始まりの樹から生まれた剣が交わる時、お互いの本質が発揮され、世界は歪み始める」


 ある者は呟く。

 全てを知っているから。


 やがて魔女は瞳を通して勇者を見て気付いた。

 勇者が目覚めようとしていることに。


「首を跳ねても死なないなんて……。そうか、お前の剣はそういうものだったわけか。始まりの樹、それは永遠の()()()そのもの」


 始まりの樹から生まれた剣。

 それは永遠と始まりを続ける。

 つまり勇者には、始まりしか存在しないということ。終わることは許されていない。


「だったら剣を壊してしまえば……」


「なんだか分かんないけど邪魔した方が良いってことだよね」


 銀冰としいなが二手に分かれ、魔女を挟み込んでいた。

 魔女は舌打ちする。


「雑魚は引っ込んでなさい」


 魔女は銀冰に向けて手を振り下ろす。


降霊術(ネクロマンシス)


 その魔法は対象に死者を憑依させる魔法。

 今回の場合、すぐ側で歪みが発生したため、魔女の魔法に変化が生じてしまった。憑依の人物が特定されなくなった。

 憑依の人物を特定しなかったため、銀冰が最も親しくしている人物が憑依することとなる。


 魔女は瞳で誰が憑依したのかを知る。

 それは駅町で魔女が殺した銀冰の同僚。


「都合良いじゃない。男と恋愛話でもして遊んでなさい」

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