物語No.84『暦の正体』
魔女と勇者が向かい合う頃、暦、稲荷、しいな、銀冰の四人は魔女のもとへと向かっていた。
だがそこへ向かうには簡単な道のりはなかった。
降る属性をかわしつつ、襲いかかるモンスターを倒さなければいけない。
ギルド街中の冒険者がモンスターと交戦するも、次々と倒されていく。
死体が生まれ続ける。
だが、暦はモンスターを一撃で葬り、魔女のもとへ向かう。
「"終わりの樹"から産まれた槍。その槍はあらゆる理を崩壊させる」
ネタバレ屋は暦の戦いぶりを観察していた。
モンスターの致命傷部分を貫くだけで、再生できずに死に至らしめる。
長年モンスターと戦い続けてきたために生まれたモンスターの情報量と、優れた槍術があるからこそモンスターを次々と絶命させる。
後に続き、稲荷、しいな、銀冰が走る。
暦が道を切り開くおかげで、容易に進むことができている。
「魔女は、今まで手を抜いていたんだろうな」
「ああ。これほどのことができて、それを使わず隠していた。いや、手を抜いて遊んでいた。本当、気味が悪いよ」
魔女の異常な強さを知り、三人は恐怖していた。
だが暦はこれほどのことが起きているにも関わらず、驚くことはしなかった。まるで、見慣れているかのように。
「ねえ稲荷、暦ってこれまでずっと魔女と戦い続けて来たんだよね」
「あいつは、ずっとある冒険者のことを護り続けている」
「それって、暦さんが護れなかったって言う冒険者のこと?」
「そうなのだ。そして今も、暦はその冒険者たちのために戦い続けている」
しいなと銀冰は互いに顔を見合い、首を傾げる。
「その冒険者って死んだはずじゃなかったの?」
「確かに死んだのだ。暦は何度もそれを見ている」
二人はますます理解に苦しむ。
「どういうこと?」
稲荷はそれを言おうとした時、思わず口を閉じた。それはネタバレ屋、そして暦から口止めされていることだった。
だが今にして思えば、隠すようなことではなかったのかもしれないと稲荷は思うようになっていた。
だから狐はそれを呟く。
「暦はねーー」
稲荷はそっと、その言葉を口にした。
「ループしているんだよ。三百回以上も」