表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(旧)一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章3.4『VS魔女』編
89/105

物語No.83『絶望へのカウントダウン』

 魔女と勇者パーティーの戦闘が始まって八分。

 勇者パーティーは更に中衛二人と後衛一人を失い、前衛一人と後衛二人というアンバランスな編成となってしまった。


 常に上空から降り注ぐ無数の属性の雨。

 時折降るモンスターにも気を配りつつ、魔女を討たなければいけない。


 勇者、オシリス、ペインは状況の最悪を悟っていた。

 既に三人まで減らされ、魔女を討つことは絶望的。

 であれば、勇者は考える。


「すまんが、多分私たちはここで死ぬ。だが、ライが来れば、あの少女が魔女を倒してくれる。だから時間を稼ごう」


「分かりました」

「仕方ないな。私が全力でサポートするか」


 盾を構えるオシリス、メスと注射器を構えるペイン。勇者は二人の前に立ち、魔女に刃を向ける。


「時間稼ぎか。そうと分かれば時間はかけない。一秒も無駄にせずお前らを地獄に叩き落とす」


 魔女は動いた。

 再び瞬間移動。


 移動先を分からせない巧妙な転移魔法。

 だが勇者は悟っていた。


「まずお前が真っ先に狙うのはここだろ」


 魔女が転移するよりも速く、勇者は空を駆け抜けた。風が弧を描き、ペインの背後に現れたばかりの魔女に刃が振り下ろされる。

 魔女は左腕にかすり傷を負う。

 咄嗟に瞬間移動し、逃亡を図る。だがそれを勇者は推測していた。


(移動先は常に私の後方斜め上。お前が最も安全だと感じている範囲(レンジ)さえ予測すれば瞬間移動を無意味にできる)


 勇者の刃は再び魔女に傷を負わせた。

 すべては致命傷には至らず、かすり傷で終わるものの、刻一刻と魔女を追い詰め始めていた。


「時間稼ぎの割に攻めるわね」


「私は勇者。世界を平穏に導く者だ。だからこの刃は、」


 魔女は翻弄されていた。

 勇者の圧倒的勘の良さと行動の速さ。

 何より、互角な戦闘力。


「お前を討つ」


 剣は魔女の左脇腹を突き刺した。


「なぜ……」


 どうして気づかなかったのだろう。


「残念だな。また一人仲間が死ぬわね」


 魔女はペインの前に立っていた。

 ペインは注射器を魔女に向けて突き刺そうと腕を伸ばす。だが魔女は動きを読み、注射器を持つ手を掴み、動きを止めた。

 魔女の左手はペインの殺意を受け止め、右手は漆黒の電撃を纏い、今にもペインの心臓を射抜こうとしていた。


「『致命的な流電デッドリー・エレクトロ』」


 素手で心臓が射抜かれる。

 寸前、飛来した盾が右手を弾いた。


「阻む。私は、何よりも頑丈な防御役(ディフェンダー)ですから」


 遠距離から確実な防御を発動させる。

 オシリスは勇者パーティーの中枢を担う最強の防御役。

 魔女の魔法でさえも男の防御は破れない。


「潜在能力『不壊魔法』」


 男の魔法は絶対に壊れない。


「であればーー」


 魔女の牙はオシリスへ向けられる。

 魔女はオシリスの四方に特大の爆発を発生させた。だがオシリスの身体は防御魔法がかけられ、傷一つ負うことはなかった。


「その潜在能力があれば、先ほど死んでいった仲間たちも護れたんじゃないか」


「……っ」


「それとも、あなたは過去に閉ざされているのかしら。だとしたら自分一人だけ生き残り、仲間が死んでいくのを眺めていなさい」


 オシリスの脳裏には忌まわしい過去が甦る。

 仲間が次々と死んでいく光景(トラウマ)。過去が男を蝕んだ。


「うぁぁあああぁぁあぁあぁぁぁ」


 頭を抱え、地に伏した。


「『絶望語り(トラウマテラー)』」


 その魔法は対象のトラウマを増幅させ、精神崩壊を起こさせる。


「どれほど虚飾でトラウマを消そうと、過去は消えない。永遠の絶望に苦しみなさい」


 オシリスはトラウマに飲まれた。

 実質、戦うことはできない。


 魔女は標的を変更。

 ペインへ視線を送る。だがペインを殺すのは容易いことではなかった。

 密着し、張りついて護る勇者。


「さて、次はどんな悲鳴が聞けるかしら」


 魔女は笑みを浮かべる。

 彼女は今、勝利を噛み締めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ