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(旧)一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章3.4『VS魔女』編
86/105

物語No.80『VS魔女・始まり』

最終章、開幕。


 魔女が終わりを告げる五月六十日まであと数分。

 異世界に不穏な空気が漂っている。

 勇者を筆頭に、異世界の最高戦力がギルド街で一堂に会する。

 勇者パーティーが勢揃いし、中には名医であるペインの姿も見られる。


 勇者はペインの姿を見ると、側に寄る。


「勇者パーティーには参加しないんじゃなかったのか?」


「魔女によって世界が滅ぶかもしれない日に、自分の臆病な信念を貫けるほど馬鹿じゃない」


 ペインの参戦は勇者にわずかな驚きを与えた。


「感謝する」


 戦わない、そう決意した者も此度の戦いには参加している。

 それほどの脅威が迫っている。これから起こる事態は世界を震撼させる。



 ♤



 ギルド街の外縁部に布陣するギルド第三師団。

 隊列はバラバラ、士気も下がっている。

 元々魔女に支配されていた第三師団。そのため魔女の強さも間近で見ている。

 緊迫した空気が貼りつける。

 ギルド第三師団副師団長を務める真実の右は遅れて、待機している第三師団の面々の前に現れた。

 表情は強ばっている。


「副師団長。どこへ行っていたのですか?」


 団員の一人が問いかける。

 真実の右は反応に遅れ、声をかけてきた団員に視線を向ける。


「少し、会いに行っていた」


「誰にですか?」


 少しの間が空く。


「会ってきたのは、俺たちの……長だ」


 質問をした団員はその意味を悟り、さらに聞き返すような真似はしなかった。

 真実の右は先頭に立つも、落ち着かない様子。

 病室に、数名の警備とともに隔離されている第三師団師団長真実。その者の存在が真実の右にとっては気掛かりだった。

 眠る女性の姿は、記憶になくても感じてしまう。

 どこかで仕えていた、という不思議な感覚が。


 これまで魔女によってどれほどの被害がもたらされたのか、知るよしもない。

 もしかしたら師団長真実のように、存在を消された者が他にもいるかもしれないと疑念が浮かぶ。


 まだ誰も、魔女の本当の恐ろしさを知らない。



 ♤



 ネタバレ屋。

 彼女は暦を呼び出し、二人きりで話をしていた。


「まず最初に言っておくと、世界を救うにせよ、世界が滅ぶにせよ、とある人物の死は確定している」


 ネタバレ屋はすべてを知っている。

 暦はそれを知っているからこそ、その事実に驚くこともなく、淡々と受け止めた。


「もし何度ループを繰り返したとしても変えられないのか?」


「変わらない。その死は必ず訪れる。その死は勝利と敗北の目印になる」


「勝利と……敗北の……?」


 暦はネタバレ屋が言った言葉の意味を理解できなかった。

 未来の起きる幾つものルートを知る彼女にとって、暦が理解できないことも分かっている。


「私はこれ以上語らない。未来でまた会おう」


 ネタバレ屋は口を閉じた。

 長い付き合いである暦は、ネタバレ屋がもう口を開かないことを分かっている。

 惜しみつつも、ネタバレ屋を出る。すぐ外に待機していた稲荷、銀冰、しいなと対面する。


「鍛冶屋へ赴こう」


 普段は落ち着いたペースだが、今だけは焦りを見せていた。

 足早に鍛冶屋へ赴く。

 到着するなり、一人の鍛冶師が暦を迎え入れる。


「例の結晶の件、完了しましたか?」


「龍の鱗のように硬かったがその分上物が完成した」


「感謝する」


 赤い結晶を加工した短剣が暦に手渡される。

 代わりに暦は金貨が数十枚入った袋を渡す。


「これで戦闘準備は整った。あとは魔女を討つだけ」


 この日を待ち続けていた。

 魔女を討つ日。


 過去に浸る暦。その背後で稲荷は叫んだ。


「どうした?」


「そそそ、空を見るのだ」


 鍛冶屋を飛び出し、空を見る。

 そこには、




 ーーそして、


「その人物を見つけたら直ちに拘束せよ。彼女は、我々の敵だ」


 勇者がギルド全師団の団員に呼び掛ける。

 特に、真実の右はその人物の名を聞いて驚く。


 ギルド街に総戦力が集う。


 時刻は零時。

 五月六十日がやって来た。

 ギルド本部の鐘がギルド街中に鳴り響く。


 鐘の音がまるで天使のラッパのように響く中、彼女は天使のように現れた。

 背中には純白の翼を生やし、純白の瞳を輝かせて。


「いつもと雰囲気が違うな」


 勇者は魔女に違和感を感じる。


「予言通り、私はこの日、すべてを終わらせる」


 始まりは特大魔法とともに。

 魔女の頭上には特大の魔方陣。

 魔方陣は拡大し続け、ギルド街全体を包み込んだ。


「終焉を始めよう」


 魔方陣は光り始める。

 真っ黒な虹色で輝く空は、すべての人々を恐怖に染めた。


 魔法が発動する。


「『魔女の黙示録(ジャッジメント)』」


 異世界中に炎が、水が、雷が、氷が、風が、毒が、金属が、そしてモンスターが降り注ぐ。

 終焉の一幕。

 異世界のどこへ逃げても、死からは逃れられない。


 それほどに、魔女の本気は死を意味する。

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