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(旧)一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章3.3『嘘の矛盾(ライオーバーパラドックス)』編
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物語No.78『私を真実にして』

 少女の視線の先に立つ三人。

 手に感じた温もりは既に消えているーーはずなのに、身体のどこかに温もりはあった。


「私は……」


 少女は歩き始めた。


 他人を信用しないと誓った。他人は大嫌いだった。

 しかし少女には理由ができた。


「勝手に誓うよ、東雲。私はーー」


 一歩を踏み出した少女。

 しかし少女の額に石が投げられる。

 額から流れる血が瞳を伝い、頬を流れる。


「お前がこれをやったのか」


 傷を負った生徒が瓦礫を踏み越えて現れた。


「マジでお前何なんだよ。調子乗るなよ」


 また一人、生徒が怒りを込めて現れる。


「おーい。一人で勝手に転んだ野郎があそこにいるぞ」


 次々と生徒が瓦礫を超えて現れてくる。次第に生徒は数を増やし、少女の四方を囲んでいる。

 生徒は皆少女に石を投げる。


「謝れよ」

「謝るのは得意だろ」

「謝ることもできないの」


 皆が一同に言う。


 それは少女の過去である。

 それは少女のトラウマである。

 少女の心に深くこべりついた恐怖の感情。簡単に消えるものではない。


 だから少女は長い間苦しみ続けた。

 周りを正しく認識できないほど追い詰められた。

 あの日の災いが再現されるように、生徒は少女を虐げる。


 だが少女は俯かなかった。

 あの日、他人を見れないようになった。他人に恐怖を刻まれた。

 怖いはずだ。乗り越えた。

 逃げたいはずだ。噛み殺した。


 今の少女には言葉があった。


「私は嘘に支配されない。嘘は私が支配するんだ」


 少女は分かっていた。

 ここが自分の嘘で出来上がった世界だということを。

 自ずと、罵声を浴びせていた生徒は次々と消えていった。


 少女は過去を越えた。


「嘘は真実へ」


 だから少女は嘘の世界で過去を越えた。

 嘘か真実か、少女にとってはどうでもよかった。


 少女は再度、三世、愛六、琉球の三人に目を向ける。


「ここで問題。これまで言った私の言葉の中に嘘がある。それを真実に変えたら、私はお前らの仲間になろう」

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