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(旧)一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章3.3『嘘の矛盾(ライオーバーパラドックス)』編
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物語No.65『そして彼女の孤独が始まる』

 空が闇に覆われた頃、勇者は部屋を抜け出し、ギルド本部の外に出る。

 向かった場所は魔法警察本部。

 入り口前で警備をしていた二人の男は、勇者の顔を見るなりすぐに扉を開け、勇者を本部内へ通す。

 しばらく廊下を歩くと、立ち止まり、壁に瞳を向ける。この行為が引き金となり、壁はわずかな振動を立てて動き、隠し通路が現れた。


「勇者様よ、お待ちしていましたぜ」


 魔法警察警部イグナイト。

 肩に垂れる緑の髪を揺らし、勇者にお辞儀をする。顔を上げ、真っ赤な瞳で勇者を見る。


「ライの様子は?」


「あいつだったら大人しくしてんぜ。ずっと陰気臭くて気持ち悪い」


 口調はヤンチャで、恐いもの知らずな振る舞い。

 勇者は特に指摘することはない。


 下へ続く階段を進む。

 進んでいるのか戻っているのか分からなくなる不思議な階段。螺旋状なのか真っ直ぐなのか分からない、ボーッとする感覚に陥る階段。

 勇者は黙々とイグナイトの後を追う。

 歩き続け、たどり着いた先には十数個の牢屋が設置されている。


 その一つに少女はいた。


「…………」


 あらゆる魔法的効果を消失させる特別な空間。外部からの魔法干渉はできず、内部からは当然不可能である。

 檻の中、少女は隅に体育座りしていた。


「あいつ、常にこんな感じなんっすよ。マジ萎える」


「そうか。だがその言葉遣いはライの前ではやめておけ。潜在能力を使うかもしれない」


 イグナイトは聞き流し、質問する。


「ってか、こんなちんけな牢屋より難攻不落の大監獄があっただろ。どうしてあのライという少女をこの牢獄程度で済ませているんだ?」


「もしライが潜在能力を使い、あの監獄にいる凶悪な犯罪者が逃げれば世界は混沌に落ちる。それに、ライは敵と決まったわけではない」


「なぜ断言できる」


「そんな、ページがめくれる音がした」


「どうせオレらには分かんないけどな。まあ勇者様が言うならそうなんだろうよ。で、オレらはいつまで看守を務めなきゃいけないんだ」


 イグナイトは退屈していた。

 いつまでも魔法も使えず、窮屈なこの場所から解放されたいと願っている。


「あと数日で何かが起こる。そんな、ページがめくれる音がした」


「未来予知ってわけか。まあ、期待してるぜ」


「ああ、そうだな」


 勇者は予感していた。

 何か最悪な事態が起こるのではないか、そんな予感が。



 ♤



 翌朝。

 勇者は一番に起き、異変を察知した。

 ギルド本部が騒がしい。泊まっていた部屋を出て、外の様子を確認する。

 丁度、勇者のもとへギルド第三師団副師団長の真実の右が駆けつける。


「何があった?」


「これより、接続者狩りである三浦友達の拘束を行います」


「ーーっ!?」


 勇者は愕然とし、真実の右が言った言葉を脳内で反芻する。

 何度繰り返しても、なぜその答えに至るのか理解できない。昨夜は常時警戒していたが、魔女の姿は確認されなかった。

 ギルド本部でも厳重な警備体制が敷かれ、魔女がつけ入る隙はない。

 ではなぜ。


「その情報をリークしたのは誰だ?」


「匿名です。しかし、信用はできる人物からの情報です」


 真実の右の発言から、勇者はどのような人物が情報を流したのかを考察する。

 真実の右が信用できる人物、もしくは情報を流した者が三浦と関係性のある人物か。

 勇者は黙々と思考し、ある結論に至る。


 勇者は振り返り、泊まっていた部屋を見る。

 暦、三世、愛六、琉球、三浦、しいな、稲荷、銀冰が眠る部屋。

 まず、三浦が接続者狩りであると知っていなければならない。その条件を満たす者はこの部屋にしかいない。


 つまり、情報を流した人物はこの部屋にいる。


 ギルド第三師団によって三浦が連行される様子を傍観しながら、勇者は結論に至った。

 泣き叫ぶ三浦が連行されていくのを、勇者はただ眺めていた。


「あの中に……裏切り者がいるというのか!?」

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