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(旧)一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章3.3『嘘の矛盾(ライオーバーパラドックス)』編
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序幕『ライの独白』

 ーー独房にいた少女は、自由を求めてはいなかった。


 私は母が嫌いだ。

 母はいつも私に優しく、叱る時も愛情を持って接してくれた。

 母の温もりに包まれているだけで、私の心は満たされていた。


 誰のもとにも変化は訪れる。

 小学校に入学する。

 私にとって、それは人生のターニングポイントだった。


 初めは楽しかった。

 誰もが初対面の世界で、一人一人が距離の詰め方に戸惑う世界で、私はこのままでいいと思っていた。

 誰かと誰かが仲良くなって、いつの間にかグループができて、誰かが排除されるよりはマシだと、今考えれば思ってしまう。


 数ヵ月が経ち、気付いた。

 私の居場所はここにはないと。


 私は誰とも馴染めなかった。

 私は誰にも歩み寄れなかった。

 自分をさらけ出すことに臆病になって、いつも私は猫を被った。

 その結果が孤独だった。


 私の表情は日に日に暗くなった。

 そんな私を見て、いつもそばにいた母が察しないはずがない。

 母は何も言わず、私を抱き締めてくれた。それがどれだけ嬉しかったか、どれだけ救われたか、他の誰にも分からない。

 それだけで私は救われた。

 だから、本当はそれだけで十分だった。


 しかし母は私に言った。


「ーーあなたは正直になりなさい」


 その言葉を、嘘を吐くなと私は受け取った。

 だから私は嘘を吐かずに生きてきた。

 空気を読んで嘘を吐くより、本当のことを言おうと思った。それがきっかけで私はクラスに馴染めるのではないか。


 期待した、母の言葉だから。


 私は正直に生きた。

 私は嘘を吐かずに生きた。




 K e r e d o s  o r e h a m a t i g a i d a x t u t a




 ーーだから私は嘘を吐く。


 ーーだから私は下を向く。

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