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(旧)一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章3.2『魔法警察』編
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幕引『魔女のひとりごと』

 潜在能力は過去に起因するものである。

 過去の憧れやトラウマ、それらが潜在能力となって発現する場合がほとんどである。


 故に、魔女はある人物に発現した潜在能力に違和感を覚えていた。


「過去は消えた。過去は存在していない。はずだけど、どうしてあの子は潜在能力が発現してしまったのかしら。それにあの潜在能力は、まるで……」


 予感がしていた。

 世界が大きく一変するのではないか。

 根拠も証拠もないけれど、確信に近い予感が胸をかする。


「この世界には未だ主人公はいない。まだ蕾があるだけよね」


 魔女は三世や愛六、琉球のことを思い浮かべていた。


「主人公としての可能性はあるのだけれど、到達するには程遠い。主人公たる力もなく、主人公たる器はない。けれど、もしこの先の未来に大きな変化が訪れるとしたならばーー」


 魔女は期待をしていた。

 もし器が成るのであれば、もし彼らに大きな変化が訪れるならば。


「私は欲しいのよ」


 魔女は理想を思い浮かべる。

 まるで英雄譚を読む子供のように、期待と興奮に満ちていく。

 未来を夢見る子供のように、彼女の瞳は映すべきものを探していた。


 キラキラと、純粋な子供のように輝く瞳。

 魔女の瞳はある少年を気にかけていた。


「三世、異名はエーテル。最初は臆病者だと思ったけれど、何度も彼を見返せば誰だって気付く。あの三人の中で最も主人公に相応しいのは彼だと」


 知略と戦術で魔女を追い詰める。

 何度失敗しても、何度敗北しても、彼は立ち上がる。

 最後に劣勢を覆し、魔女の願望を幾度も妨害した因縁の敵。


「ガッカリさせないでよね。もう、私はこれまでのようにはいかないわ」


 魔女は左目を失った。

 代償に得たものもある。


「やがて来る五月六十日、そこで全てをリセットしよう」


 魔女は期待に胸を膨らませていた。

 ぞくぞくとわき上がる興奮に全身を支配されながら、躍る心を快感に浸す。


「エンディングか、オープニングか。正直どちらでも構わない。私はいつまでも待ち続けるわ」


 魔女はそっと自分の唇をなぞり、上ずんだ声で呟く。


「ーーあなたが主人公になる時を」

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