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(旧)一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章2前『三世編・魔女堕ち』
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物語No.20『接続者狩り』

 ギルド本部七階。

 ギルド職員のみが侵入を許される場所であり、会議室や研究資料室などがあり、職員が休憩するスペースともなっている。

 第三会議室にて、ギルド職員らは激しい議論を繰り広げていた。


「また発生したというのか。これで何件目だ」

「ギルドの責任問題だぞ」


 長方形の机を二十以上の椅子が囲んでいる。各席に今回の会議に招集された職員が座している。

 ギルド職員が皆声を上げて慌てている。

 職員の中で、ある女性は目の下に隈をつくり、机に状態を倒して退屈さと堪えきれない眠気を感じていた。


「おい不寝(ねず)、なぜ会議中に寝る」


「だってさ、解決策も何も思いついていないのにワイワイと騒ぐだけ。終わりのない会議は眠くて眠くてさ、飽きるんだけど」


 会議は踊らず、そして進まず。

 不寝はカバのような大あくびで眠気を増幅させ、今度こそ机にぐったりと倒れ、眠りについた。


「まあいい。話し合いを続ける」


 不寝のいびきが響く中、職員らは問題解決に勤しもうとしていた。


「今回殺されたのは現実世界出身の人間。異世界に来てから二年以上経つ熟練の冒険者であり、一人で討伐したモンスターの強さは星三上位。パーティーでは星四下位の討伐にも貢献している凄腕です」


「だが殺されたか。敵は相当な凄腕か」


 星三上位は精鋭冒険者の十人組(デクテット)で苦戦を強いられる強さ。

 二年以上も生き抜き、尚且つ星三上位モンスターにも匹敵する冒険者を殺したことから、さらに格上であると分かる。


「以前にも二人組の冒険者が殺され、今日まで二十人以上の冒険者が殺されている」


「今回の事件はギルドが直々に対処すべき問題です。しかしまだ敵の強さの上限が見えない」


「勇者パーティーに任せればいい」


「彼らは今ダンジョン領域第六十六区画以降へ大規模遠征中。ギルドの幾つかの師団も出動し、街には凄腕の冒険者は少ない状況にある」


 まるで狙ったかのようなタイミングだ。

 常時ギルド街は最強の攻防力を誇るが、現在は脆弱さが露となり、穴だらけという状況にある。

 たとえ凄腕の冒険者がいても、接続者狩りは神出鬼没。未だ捕らえることには至っていない。


「このままでは接続者狩りは街中の冒険者を狩り尽くす」


「これまで殺された者は全員現実世界から異世界に接続をした者ばかり。何故その者たちが標的にされているのかは不明」


 会議が停滞する。

 この時を待っていた。

 不寝は今起きたとばかりに上体を起こし、大きな伸びをして周囲を見回す。


「誰も解決策がないようだし、ちょっと提案あるんだけど」


「どうせ大した提案でもないだろ。で、どんな案だ?」


「ある冒険者に目をつけてまして、その冒険者に討伐依頼を出すというのはどうかなー?」


「たとえ依頼を出したとして、どうやって接続者狩りを見つける?」


「大丈夫大丈夫って。彼女は一度見た相手の居場所をどこまでも追いかける"魔法(呪い)"を使えるし」


「頼もしいな。では成功したら金貨をーー」


「金貨? 違う違うし」


 不寝は眠そうな顔に笑みを滲ませる。

 まるで毒リンゴを食べても死ななかった白雪姫のように、美しくも不気味さがある。


「成功報酬はさ、()()をギルド幹部に推薦したいんだけど」


「そんな戯れ言、通ると思っているのか」


 職員らは立ち上がり、不寝へ総抗議。

 会議室がある種飲み会的な騒がしさに包まれる。


 だが不寝がこの状況で提案したことには意味があった。

 停滞する会議、そこに解決策を見出だした。だが不寝の提示する案が決定的な解決ができるかどうか、まだ疑わしい。

 不寝の言う"彼女"が誰であるか、駆け出しの冒険者であったのなら期待はできない。


 未だ状況に決定的要素がない。

 そう感じた不寝はあくびをするように言う。


「私が言うその人とは、ギルド第三師団師団長呪いの魔女エンリ」


 職員らのざわつきが一瞬静まる。


「待て。彼女には現実世界の守備を任せてある。もし彼女がいない間に現実世界が危機に陥れば大変なことになる」


「分かってるけど。でもあなた方は分かっていないんだね」


「何をだ」


「接続者狩りの正体だけど」


 この時点で、不寝が何を言おうとしているのか理解している者が多くいた。

 不寝は奇妙な笑みを浮かべ、彼らが脳裏に思い浮かべる答えを提示する。


「接続者狩りは接続者。つまり、現実世界に彼女はいる」


 会議室は騒然とした空気が流れる。


「もし彼女ーー呪いの魔女エンリーーがギルドの幹部になっても能力としては十分だけど?」


 誰も否定できない状況。

 不寝はこの時をずっと待っていた。


「分かった。もし彼女が接続者狩りを討伐できた場合、彼女をギルド幹部として推薦する」


「じゃあ寝ますので、後はご自由にやっといていいよー」


 いつの間にか脇に挟んでいた枕に顔をこすりつけ、眠気に体を踊らされるように会議室を出ていった。

 会議室には台風が過ぎ去った後の余韻が残るだけ。


「本当に良かったのでしょうか?」


「ああ。このまま接続者狩りに被害を被り続けるよりは、彼女に任せる方が得策だ。だが彼女らはどうやって接続者狩りの正体を突き止めたんだろうな」


 魔女エンリはいつだって君を見ている。

 だが彼らは、それに気付かない。

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