表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(旧)一人一人に物語を  作者: 総督琉
第一章2前『三世編・魔女堕ち』
18/105

物語No.17『魔法の使い方』

 ライの「勝負開始」の合図とともに、互いの体は動き出した。

 先に仕掛けたのは真実の右。

 右腕を振り上げた動作に合わせ、大地を穿つ電気が天に向かって突き上がる。

 三世はバックステップで回避し、噴水のように湧き上がる電気の後ろに身を隠す。


「弾けろッ」


 真実の右の声に合わせ、電気はドーム状に爆発を起こした。だが既にその場に三世はいない。

 すかさず周囲を確認して三世を探すが、四方に姿は見当たらない。


「透明化か……」


 三世の姿が見えないことから、幾つかの魔法を想定する。

 襲撃に備え、全身に電気を帯びさせる。


「無駄だよ」


 声が聞こえた。床の方から。

 彼が下を向いた時、床は赤みを放っていた。


「火かッ!」


 火炎が噴火並みに床を突き破って空へ昇る。

 咄嗟にかわした真実の右だったが、火は左腕に小さな焦げ跡を残す。


 エンリが操作するとはいえ、三世の魔法の威力に真実の右はやや焦りを見せる。

 纏っていた電磁バリアを破り、体に小さな火傷を残させた。油断はできない相手だと再確認し、戦闘態勢に。


「真実の右。あなたは強いけど、私に勝つにはまだまだ未熟なようね」


 穴が空いた地面から出てくる三世は、風を纏いながら飛翔していた。

 真実の右は三世に向けて右手を向ける。


「貫けッ!」


 右手には黄色い魔方陣が創成される。

 凝縮された電気が右手の魔方陣から勢いよく放たれる。

 三世は微動だにせず、電気はすぐそこまで迫っている。反射できないのか、と思われたその時、床から巨大な氷壁が出現する。


「これは……ッ!?」


 電気は氷によって霧散し、真実の右は氷に足を捕らわれた。


「私の勝ちね」


 と言いつつも、三世の体は千鳥足になり、床に倒れた。

 そこでようやくエンリは自分の口で話し始める。


「さすがに魔力切れよね。でも真実の右、あなたは……って」


 真実の右が氷に捕らわれていたはずの場所は、一部だけ高温に犯されて溶けたような痕跡が残っている。

 エンリはハッと後ろに気配を感じる。


「さすがねあなたは」


「戦歴が違いますから」


「言うのね」


「しかしこれで魔法を習得できるでしょうか」


「できるわよ。理論的に魔法を習得していくのと違い、感覚的に魔法を習得するには魔法を経験させること。しかも自分の体で魔法を使ったのですから、今回使った属性の一つは発動できるでしょ」


「使えなかった場合はもう一度俺と戦いますか?」


「使えなかった場合は、その程度の器だったと思って、私はこの子を捨てるわよ」


 エンリの声色から真実であると感じとることができた。

 決して冗談ではない、三世を捨てるほどの無情さが彼女にはあった。


「相変わらずあなたは辛辣ですね」


「だって異名は魔女ですから」


 二人が会話をする横で、魔力切れによる疲弊に倒れる三世。


「エンリ師団長、彼はどうしますか?」


「起きるまで待つわ。まだ一つ、しておかなければならないことがあるもの」


 エンリは魔女の微笑みを浮かべる。

 目はアーチを作り、口は三日月を作る。


 真実の右に届かない声で、魔女エンリは口にする。


「そろそろ三人の中から一人脱落させましょうか」


 憂鬱な魔女は求める。

 自分を憂鬱から救ってくれる英雄を。

 故に、自分が思い描くシナリオを三人に歩ませる。

 終焉の道へ誘う死神のように、破滅のエンドロールが流れ始める。

 終わりはもうすぐそこにある。

 終わりへ、終わりへ、この物語は進み行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ