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第終話 『世界の始まり』

 冷たい結晶の中で、私は静かに目を閉じた。

 冷たい結晶の中で、私は世界に愛を告げた。


 誰もが望むだろう、私が創り上げた世界は。

 だがこの世界を生み出すまでに、私は多くの犠牲を払った。それは時に大きなものであり、私を悪に染めたこともあっただろう。


 苦痛に苛まれ、激しく後悔し、苦悩の末に死を選ぼうとしたこともあった。だが、彼女がいたから、彼女がいつでも私の側に寄り添ってくれたから、だから私は歩き出せた。

 今この世界を創れたのも、きっと彼女がいたからだろう。


 全て終わった。

 何もかもなくなった。

 それでも、新世界へと彼らは向かう。


 全ては私が書き上げた世界だったーーはずだった。

 全ては最初から描いていた物語だったーーはずだった。

 最初から全て私が描いた物語だとしても、誰かが描いたプロローグだったとしても、これは彼らとともに歩んだ英雄譚、なのだろう。


 だから私は戻らない。

 だから私は振り返らない。


 たとえ永遠という闇の中に飲み込まれることになっても、それでも私はこの選択に後悔はしないだろう。

 ーーいや、少しだけ違うな。

 本当はもう少しだけ、彼らと一緒にいたい。それでも、世界はそれを許してはくれない。


 旧世界の崩壊に今、私は巻き込まれる。

 だから、新世界へと私は己を犠牲にした。


 全てを変えるために、理を破壊し、根底から全てを覆すために。


 残酷だ、それでも世界は色づいている。

 未来は明るい、だからその未来に彼らを連れていこう。


 私はここにいよう。

 私の永遠と生け贄に、世界に永遠を与えよう。



 ーーたとえ死ぬことになろうとも、私はあなたを救ってみせる。

 ーーいつか救えると分かっているのなら、私はそのいつかに賭けます。



 誰かがそう言っていたな。

 その言葉に影響を受け、私はこの選択を選んだのだろうか。


 けれど、これだけは言える。






 ーー私は、間違ってなどいなかった。


ーー四月一日

 物語は始まるーー

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