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夢切創の怪事件簿  作者: ゆきだるま
4/4

1-4 *

*シナリオ完成しました。BOOTHで出すかもしれません。また、これとは違うリプレイ動画を出すかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。


「なるほど、そっちの成果はその紙とラブレターか。うんうん、随分と上々の成果じゃないか!よく頑張ったね遥ちゃん!」

「ラブレターは収穫に入るんですかね?まぁありがとうございます…」


手元の資料を見ながらカフェの一室で彼は満足げに頷く。それに若干納得がいかないながらも素直に褒め言葉を受け取ればさらにニコッと彼の笑みが深くなる。


「充分な収穫さ。赤松さんから聞いた話とも一致するしね」

「じゃあ勇人はやっぱり好きな人が…」

「あ、気になるのそっちなんだね??」


そう私が思ったことを素直に口にすると、ズルッとずっこけるように肩を斜め左下に下げる彼を?マークをつけて見ていれば、こほん咳払いと共に身だしなみを整えた彼が、途端に真剣な面持ちで語り始めた。


「…赤松くんはほぼ間違いなく、その集会とやらに向かって、何かしらの事件に巻き込まれたんだ」

「……っ、あの馬鹿、どうしてそんな無茶を…!」

「さぁね、流石に俺にはわからないな。それは遥ちゃんの方が知ってるんじゃない?」


そんなの言われなくても知っている。離れていたとはいえ幼馴染なのだから。

だからこそ心配なのだと心の内で思う自分に気がつかず、創は話を元へと戻す。


「…で、今そのサイトについて調べてるんだけどさ…さっきのURLを打ち込んでも『そんなページは存在しません』だって。定期的にアドレスを変えてるのかな?」

「そうなんですか?…じゃあ、どうやって調べれば…」

「まぁネット上のことはネット上で調べるしかないね。俺が調べとくから遥ちゃんはちょっと息抜きでもしてきなよ」


慣れないことしたせいで結構疲れたでしょ?と言う彼の好意に甘えて、少し外の空気を吸おうとカフェのテラスへと向かう。

商店街の街中にあるテラスは人が行き来しているところが見えて、喧騒が耳によく届く。

けれど不思議と嫌悪感は湧かず、むしろ心地よいと感じるのだから人の脳は不思議だど思いながらゆっくりと深呼吸をした。


そこで先ほど別れた蓮のことを思い出す。

正確には最後に彼が話していた綾瀬という人物について、だが。


「蓮があそこまで褒める人って、どんな人だろ」


彼自身気が付いていないかもしれないが、蓮の中で普通というハードルはかなり高く、できる人という敷居もかなり高い。

故に彼が他人に対して褒めることなど中々ないのだが…。

あの時見た蓮は、とても楽しそうに綾瀬という人物のことについて語っていた。

それがなんだか気になって、息抜きついでに持ってきたスマホで彼女について検索する。

すると彼女の情報は最も簡単に出てきた。


「本名、綾瀬紫…えっ!?この見た目で40歳過ぎてるの!??すごい美人〜…」


どうやら蓮の言う通り彼女は界隈では結構有名な相談員らしく、相談所のHPだけではなく彼女の人柄を称える記事がいくつも出てきた。

基本的にどれも書いている内容は変わらず、『心が楽になる』や『今までの相談した人たちの中で、1番親身になって相談に乗ってくれる』など批判の声が全くと言っていいほど目につかなかった。


それほどまでにすごい人なのだと感心しながら、スマホの電源を切ろうとした矢先の出来事だった。

ふと1番下の欄に、今まで調べた記事とは全く違った…むしろ関係のなさそうなものが出てくる。


「…[悲劇!母娘を襲った事故]…?」


何故いきなりこんなものが出てきたのか。気になってしまった私は、怖いもの見たさでそのURLを開いてしまった。



◇◇◇◇


情報【綾瀬とその娘に起こった事故】


20××年3月2×日、午後2時頃に**交差点にて暴走したトラックが工事中の建物に衝突する事故が発生した。

運転手の男性は持病により意識を失ったらしく、事故現場にブレーキ痕などはなくそのまま死亡。巻き込まれた人物は交差点にて買い物を楽しんでいた母子2名だった。


ここからがこの事件の悲劇である。


先ほど事故に巻き込まれたのは母子2名と書いたが、母親の方はトラックに引かれたわけではなく軽症で済んだ。

しかし娘の方は突っ込んできたトラックに直撃、跳ね飛ばされた先で工事中の鉄骨が脚の上に落ちてきて切断を余儀なくされたらしい。


目の前で娘を吹き飛ばされ、彼女の足の切断を余儀なくされた母親の心情を考えるとなんとも痛ましい事故である。

さらに事故から2週間経過した今でも娘は意識を取り戻すことはなく、母親は娘の介護に追われているそうだ。


このような悲惨な事故を起こしたにも関わらず、運転手の所属する会社は謝罪だけで済ませようと言うのだから腑に落ちない。

そもそも持病持ちの人物を雇った会社に全ての責任があるのではないかと私は考えるばかりである。



◇◇◇◇


「っ…!」


記事の最後には事故当時の写真と思われる画像が映されており、当時の悲惨な状況を想像してしまい血の気が引いていく。

思わず口元に手を当てて込み上げてくる吐き気を抑えれば、時間と共にそれは落ち着きを取り戻した。


「これが、綾瀬さんってこと…?」


そう考えれば医者から相談員になった経歴も腑に落ちる。おそらく娘の介護のために、少しでも時間が取れるようにしたのだろう。

医者という職業の忙しさを伝え聞きとはいえ知っている自分はそう考え納得した。


「おー、どうだった遥ちゃん。息抜きは…できなかったみたいだね」

「…ちょっと嫌な記事を目にしちゃって…創さんはどうですか?」

「なぁーんにも!どれを調べても出てくるのはベビーグッズだけ!!残念だけどすぐには見つかんないみたいだ」


結局息抜きどころか気分を悪くして帰ってきた自分に、創はにこやかな顔をして出迎える。

彼に調査の進捗を聞くと、大袈裟に肩を含め面白おかしく茶化して結果を伝えてきた。

…どうやら全くと言っていいほど成果は出なかったようだ。

しかしそれよりも先程の事故の写真がどうにも頭から離れずどうにも笑えずにいれば、異変に気がついたのか少し真剣な表情をした彼は身を乗り出して尋ねてきた。


「…本当に顔色悪いね。どうしたの?」

「……実は、さっき蓮が言ってた相談員について調べていて…」

「あー…綾瀬さんだっけ?彼女が?」


自分がこうなった原因である画像は見せずに、話だけで経緯を説明すれば、興味深げに創は頷く。先程も思ったことだが、どうやら彼は彼女のことが少し気になるようだ。


「……成る程、そんなことが。人生人それぞれなんて言うけど、中々にハードな経歴だね」

「それで、事故当時の写真を見ちゃって…なんか、現場を想像しちゃったんですよね」

「うわ、それは大変。とりあえず水でも飲もうか」


言いながら水を差し出してくる彼の好意に素直に甘え、コップを受け取る。

なんというか、直接事故の様子を見たわけでもないのに情けないと自分の精神の脆弱さを嘆いていれば目の前でスマホを触り始めた彼が気を逸らせるように話し始めた。


「しかし綾瀬さんかー。そんなことがあったのに随分評判はいいみたいだね。いや、そんなことがあったから、かな?」

「そうみたいですね。事務所も土日祝日問わず開いてるみたいで…とてもお仕事熱心な方ですよね」

「ふーん………ん?」


おそらく今現在綾瀬のことを調べているのだろう。あまりの評判の良さに感嘆の意を示していた創は、突然ふと眉を顰めて熟考し始める。

彼の変化に違和感を覚えて私が口を開く前に、創がより一層真剣な面持ちで話しかけてきた。


「………遥ちゃん、これ見てくれる?」

「これって…勇人の家にあった紙じゃないですか。これがどうかしたんですか?」

「ここ、集会日のところ。……綾瀬さんの事務所と、休みの日が同じだ」

「…え?」


ペラリと差し出されたのは一枚の紙。

それは先程自分が見つけた自殺サイトの集会とやらの日程日が書かれている予定表で、そんなところになんの情報があるのかと考えていれば、目の前の彼の口からとんでもない事実が飛び出した。

創は持ってたスマホを差し出して紙をめくりながら、まるでパズルのピースを当てはめるかのように一つ一つ確認をとる。


「それにこの日も、この日もこの日も…。過去のどれを辿っても、集会の日と彼女の事務所の休日が被ってる。…これは流石に、偶然ではすまされないかな」

「…本当だ…じゃあまさか…」


「うん。綾瀬紫は【ゆりかご】と何かしらの関係性がある」


カフェ内に流れるBGMが、その瞬間止まったような気がした。


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