表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
897/1800

第46章ー17

 ともかく磯野員昌と宮部継潤の現状認識の背景には、そういったオスマン帝国事情があった。

 そして、日本本国が介入してくるまでに、少しでも早くオスマン帝国領の多くを制圧して、既成事実を積み上げようと、ローマ帝国軍は逸っていたのだ。


 だが、その一方では、ローマ帝国がこの進軍に際して、ユダヤ教徒を頼り、又、キリスト教マロン派やイスラム教ドゥルーズ派やアラウィー派に対して、オスマン帝国への反乱を密かに使嗾したことが、徐々に祟る事態が起きつつあった。

 何しろざっとの話になるが、何だかんだ言っても(この当時、この世界の)レヴァント地方全体で言えば、7割から8割の住民がイスラム教スンニ派の信徒なのだ。

 そこに東方正教を信奉するローマ帝国軍が進撃し、更にユダヤ教徒を主体とする部隊が、イスラム教徒にとっても聖地であるエルサレムを占領したのである。


 そういった事情を噂等で知った一部の熱心なスンニ派信徒がジハード(聖戦)を叫び、その動きに指揮系統が混乱しているオスマン帝国軍の一部が加担、合流して、早速、ローマ帝国軍への武装抵抗運動が徐々に起きつつあるという現実もあった。


 磯野員昌と宮部継潤はそういった情報をお互いに整理したうえで、速やかにベイルートを目指した。

 その一方で、オスマン帝国軍を分散させ、少しでも戦力を削るために、アンマンを目指してほしい旨を酒井忠次が率いるユダヤ人部隊に依頼もした。

 だが、補給等の問題もあり、結局は6月20日を期してベイルートを攻撃して、即日、占領するという事態にならざるを得なかった。

(尚、ほぼ同じ頃に、アンマンも井伊直政を指揮官とするユダヤ人部隊の攻撃によって陥落した)


 それに加えて、この頃から後方、エジプトからベイルートを結ぶ陸上補給路が、徐々にスンニ派イスラム教徒の抵抗運動からくる襲撃に本格的に悩まされる事態が起きだしたのだ。


「厄介だな」

「全くだ」

 脇坂安治と藤堂高虎は、頭を痛めざるを得なかった。

 ベイルートは確かに確保できた。

 しかし、ローマ帝国軍が迫っているのを知ったオスマン帝国軍は、ベイルートを死守しようとせずに、ほとんどの将兵がベイルートから脱出してしまった。

 これでは、脱出した将兵による遊撃戦を警戒しない訳には行かない。

 その一方で、磯野員昌からは、速やかにダマスカスへの進撃命令が下っているのだ。


「実際のところ、ダマスカスにアンティオキア総主教はおられるのだよな」

「その通りだな。それこそアンティオキアに総主教座が置かれた時代は、かなり昔どころではないからな。時代の流れに伴い、アンティオキアは徐々に寂れてしまい、ダマスカスがこの辺りの中心都市になっていった。そういった事情等から、今ではアンティオキア総主教と名乗られてはいるが、実際にはダマスカスに総主教座が事実上は置かれている

 脇坂安治の問いに、藤堂高虎は答えた。


「だから、ダマスカスに速やかに進撃して、アンティオキア総主教を確保したいということか」

「そういうことだろう」

 脇坂安治の更なる問いに、藤堂高虎はそう答えたが、内心ではそれ以上のことを考えていた。


 これはダマスカスが事実上の攻勢の最終目標になるかもしれん。

 我々の兵力はユダヤ人部隊を入れても、約6万人と言ったところだ。

 それに対して、オスマン帝国軍は徐々に対サファヴィー朝ペルシャ戦線から兵力を引き抜きつつあり、又、ここやアナトリア半島の治安維持に置いていた兵力までも、少しでも我々に向けようとしている。

 オスマン帝国軍に損害を与えていない訳ではないが、そういった兵力を併せれば、数的にはオスマン帝国軍が優勢になる筈。

 そして、遊撃戦を展開されては、ここまでだろう。

 ご感想等をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >ローマ帝国がこの進軍に際して、ユダヤ教徒を頼り、又、キリスト教マロン派やイスラム教ドゥルーズ派やアラウィー派に対して、オスマン帝国への反乱を密かに使嗾したことが、徐々に祟る事態が起きつつ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ