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第44章ー13

 さて、エジプトの依頼によって建造された戦艦「コンスタンティノープル」だが、エジプトが最初にというか、絶対の条件として求めたのが、40サンチ主砲の搭載だった。

 これはその攻撃目標から必要不可欠の要求とまで考えられていた。

 その攻撃目標だが、オスマン帝国の今や首都になっているコンスタンティノープルだった。

 より正確に言えば、コンスタンティノープルを巡る大城壁を攻撃目標としていた。


 かつて、オスマン帝国軍が東ローマ帝国が守るコンスタンティノープルを攻撃した際に作られた「ウルバンの巨砲」は544キロの石弾を放つことができ、それによって大城壁をある程度は崩せた。

 だが、ある程度は崩せたというだけに過ぎず、やはり「ウルバンの巨砲」では大城壁に対して威力不足とエジプト軍は判断していた。


 そうなると、それよりも巨弾を浴びせることが、大城壁を崩すには必須である。

 しかし、それだけの巨弾を放てる大砲を地上で運ぶのは極めて困難であり、現地で組み立てるにしても一騒動では済まない。

 そうしたことからエジプト軍は逆転の発想をした。

 コンスタンティノープルは海に面した都市であり、軍艦、戦艦の艦砲射撃によって大城壁を崩そうという発想に至ったのだ。

 

 そして、544キロの石弾よりも巨大な砲弾を放てるということから、エジプト軍が要求したのが40サンチ主砲を搭載する戦艦だった。

 幸か不幸か、それこそ皇軍がこの世界に実際に36サンチ砲を搭載した戦艦をもたらしており、それこそ単なる知識レベルではあったが46サンチ砲さえも知られてはいた。

 こうしたことから40サンチ主砲は開発されて、実際に戦艦に搭載されることになった。


 だが、全てが上手く万々歳とはいかなかった。

 それこそ北米海軍にとって最大の海軍工廠といえるニューオリンズにしても、5000トン級の軽巡洋艦を実地に作った経験までしかなかった。

 それがいきなり3万トンを超える40サンチ砲搭載の戦艦を作れと言われても、様々な技術的問題が生じるのは当然の話だった。

(だからこそ北米共和国は自腹を切っての戦艦建造に消極的だったともいえる)


 戦艦の防御力の基本は、自らの主砲に撃たれても抗堪できるというのが基本になる。

 そうしたことから40サンチ主砲に耐えられるだけの装甲を備えることになったが、それだけの厚みの装甲鋼板を開発、製造するのも一騒動では済まず、実際問題として、エジプト海軍の戦艦2隻が40サンチ主砲弾の攻撃を受けた際に、主要部を防御できるかというと、極めて微妙(一部の北米共和国の技術者は不可能とまで)と見られていた。

(実際、この経験によって北米共和国は自国の戦艦にまともな装甲鋼板を備えさせることができた)


 更に問題となったのが、機関だった。

 北米共和国の海軍工廠というか、北米共和国内のどこでも、このような大型艦、船舶に搭載する機関を製造した経験が無かったのだ。

 とりあえず、これまでに製造したことのある機関を組み合わせて強化した上で搭載することにしたが、それこそ泥縄もいいところだ、と内部でも陰口を叩かれる有様となった末に、3万馬力の機関を何とか搭載して、最大速力21ノットを発揮できるようにした。


 このために鈴木孫一らは、様々な面でこの戦艦に不満をこぼすことになったのだが。

 エジプトにしてみれば、コンスタンティノープルの大城壁を壊すのが、この戦艦の最大の目的である以上は、40サンチという主砲を搭載して、実際に運用可能なこの戦艦は充分以上の代物だった。

 更にこの戦艦を裏で活用することで、対オスマン帝国戦争において、戦略的奇襲を成功させて、(東)ローマ帝国復興を成功させようとも考えられていた。

 末尾近くの機関の話ですが、私の調査能力もあって、少し誤魔化した書き方になっています。

 エジプトとしては、「大城壁」を崩すだけの主砲を搭載した戦艦を保有するのが第一条件で、それ以外の点についてはある程度は譲歩して安価なことを求めています。

 そして、新たな大出力機関を開発、搭載するとなると、それなりどころではない開発、製造費用が掛かるのは当然の話になる訳で、かなり高価な戦艦になると私は思料しました。

 そうしたことから、史実のコロラド級戦艦とほぼ同様の3万馬力の機関搭載で忍んだという裏事情があるということでお願いします。

 いや、そんなことはないですよ、と言われそうですが、作者の知識不足と生暖かく見て下さい。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 用兵家(実務側)に、要求性能を出させると往々にして総花式になって、結局、大して役に立たない物が出来る。 割り切って要求性能を絞って多分、結果オーライ。 [一言] 横須賀のヴェルニー公園で…
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