表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/1800

第1章ー7

「そういったこともあり、陸軍の方々に、ここリンガエン沖合に集って頂いたのです。もし、史実通りの世界であり、更に16世紀半ば以前にいるのであれば、我々の艦隊を打ち破れる存在はありません。ですが、下手にタイ等に攻め込んで、そこに史実とは違う強大な国家が存在等した場合」

 近藤信竹中将は、そこで言葉を区切ったが、その場にいる全ての将官が、近藤中将が言わなかったことを自然に察することが出来た。


 何しろ、地形等については、航空偵察ができるので、ある程度のことは推測ができる。

 だが、実際に現地にどの程度の国家、勢力がいるか等、航空偵察で分かる訳が無い。

 更に、考えを進めるならば。


「余り考えたくないが、そもそも仮に地形がその通りであったとしても、そこに資源があるとは限らない」

 小沢治三郎中将が独り言を言い、その言葉が耳に入った面々が、更に顔色を変えた。


 何しろ、過去にいるらしい、というあり得ない事態に、自分達が陥っているのだ。

 地形は何とか、航空偵察で確かめることができる。

 だが、それ以上のことは、現地調査をしてみないと確認しようがない。

 もしも、そこに油田がある、と思って行ってみたら、そこに油田は無かった、という事態が起きない、と誰が確信を持って言えるだろうか?


「その通りです。油田がある、と思って行ってみたら、油田が無い、という可能性もあります」

 近藤中将が丁寧に言った。

 本来なら、この場にいる海軍の最高位の軍人として、そこまで丁寧に言う必要は無い。

 だが、余りにも異常な事態に置かれ、更に10万人以上の将兵の命が掛かった状況に置かれているのだ。

 その重圧を少しでも分かち合って貰おう、という想いが近藤中将に丁寧な物言いをさせていた。


 近藤中将の発言の重みに、その場にいる陸海軍の将官全員が、暫くの沈黙を余儀なくされた。

 天皇陛下からお預かりした赤子、陸海軍の将兵10万人以上、彼らを生かさねばならない。

 日本本土が健在ならば、我々はそこに帰還すれば済む話かもしれない。

 だが、今、我々がいるのが、吉野朝から戦国時代という推測が正しいのなら、日本本土に帰還して終わりという話にはならない。

 この時代の天皇陛下をお救いし、国体を回復させねばならないのだ。

 とはいえ、補給が我々は完全に断たれた状態と言える。

 今ある手持ちの物資で、懸命に戦うと共に、物資を調達せねばならない。


「工作艦「明石」がある以上、ある程度の修理等の作業は可能ですが、「明石」にしても無から有は造り出せません。溶鉱炉が一応は艦内にありますが、良質の鉄鉱石等が無ければ、無用の長物です」

 高橋伊望中将が追い打ちを掛けた。

 空気は、ますます重くなった。

 だが、一人の将官の発言が空気を変えた。


「えーい、ここで議論ばかりしても仕方がない。取りあえず、我々の根拠地を作ってしまおう。まずはルソンを抑えてしまおう」

 第18師団長の牟田口廉也中将が、暴論を言った。

「そもそも、ここに我々が集ったのは、そのためではないのか」


「うむ」

「確かに」

 他の将官からも、賛同の声が挙がった。


 フィリピン群島の中心と言えるルソン島を制圧し、更にミンダナオ島等のフィリピン群島を抑えれば、ここにいる大日本帝国陸海軍の将兵が、自活することは可能になる。

 例え、日本本土が消滅していたとしても。

 最悪の事態に備える必要はあるが、いつまでも動かない訳にも行かない。

 それに。


「マニラの住民の中には、日本を知っている者がいるかもしれん。あれは小なりとはいえ、貿易港に航空写真からは想える」

 そう小沢中将は内心で想い、牟田口中将に賛同した。


 ここに皇軍は、マニラを制圧、更にルソン島を制圧する作戦を発動することになった。

ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
小説は雑では有りませんが、さすが陸さんは雑ですなあ
[一言] 銃弾を抜きにしても 未来の製鉄技術でつくった 刀剣を持つ10万の統率された軍団 冗談抜きで世界征服できますねw なにせ、軍を分割しての合撃やゲリラ戦までなんでもできる この時点ではありえない…
[良い点] 鬼瓦さんの「そこに資源があるとは限らない」がいい味出してますな。 世界が違う問題以外に、 『戦時南方の石油』(岩松一雄著) http://fung.html.xdomain.jp/oil…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ