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第37章ー1 年季奉公人禁止法案の議会審議と採決、更にその余波

 新章の始まりになります。

 ともかく、北米植民地に様々な不穏な動きが徐々に起きており、織田信長首相にしてもかなり躊躇うというよりも悩む事態が起きてはいたが、容赦なく時間は流れていき、1574年12月初めに第1回通常帝国議会は開かれる事態となった。

 今上陛下のご臨席の下、第1回通常帝国議会は開会が宣言され、早速、予算案や法案等が帝国議会に提出されることになる。


 帝国議会は(表向きは)衆議院と貴族院は完全に対等であり、どちらに予算案や法案等を先に提出しても構わないのだが、織田首相の支持基盤は言うまでもなく衆議院にある。

 従って、織田首相としては衆議院に予算案や今回の通常帝国議会の目玉法案になる年季奉公人禁止法案をまずは提出することになった。


 小早川道平衆議院議員は、何とも複雑な顔をしながら、年季奉公人禁止法案に対処することになった。

 自らが基盤としている安芸の選挙区の有権者の主張を汲むならば、年季奉公人禁止法案については全面賛成であると自ら獅子吼して当然の話になる。

 だが、同父母姉である武田(上里)和子からは、年季奉公人禁止法案が帝国議会で可決成立した場合、北米植民地は全面的に武装蜂起して独立戦争を確実に起こすだろう、という脅しめいた手紙が自分の手元に届いているのだ。


 更に言えば、その手紙の文言がこけ脅しとは全く言えないのが、最大の問題点だった。

 姉の和子の性格を、弟である自分はよく熟知している。

 姉がここまで手紙に書いてくる以上、北米植民地は本気で全面的に武装蜂起して独立戦争を起こす準備を、準備万端とまでは流石に言わないが、かなりの程度まで整えているのは間違いない。

 そう道平は考えていた。


 実際、道平の考えは考え過ぎとは言えなかった。

 それこそ日本本国において発行されている新聞の多くも、北米植民地の年季奉公人禁止法案に対する反発について報じる有様だったのだ。


 だが、問題はその新聞の多くが(道平の目から見れば)誤った認識に基づいて、北米植民地の覚悟やその戦力を報じていることだった。

 更に言えば、その報道内容について真偽が入り混じっているのが問題だった。

 そのために正しい情報は誤っているように認識され、逆に誤った情報が正しいように認識されるようなことが日本本国の国民の間に引き起こされる事態までが引き起こされていた。


 少し話がずれるが、道平は無所属の衆議院議員であり、他の政党所属の多くの衆議院議員からは蝙蝠のような存在だと見られている。

 道平は言うまでもないが、織田信長首相の義弟(信長の妻の美子の異父弟)になる。

 それなら道平は当然に織田首相が党首を務める日本労農党に入党して、与党議員になるのが当然のように見えるが、実際にはそうはいかないのが政治の世界だった。


 安芸を選挙区とする道平の主な支持基盤は、呉を中心とする海軍の軍人と安芸門徒と呼称される安芸の本願寺門徒である。

 そして、海軍の軍人の間では、かつて対スペイン戦争の際に大規模なストまで仄めかして賃金引上げ闘争を行った信長の評判はかなり悪かったのだ。

 又、道平は財界の大物になっている上里松一の実子でインド株式会社の(休職中だが)幹部でもある。

 そうしたことから、道平は支持者の意向を踏まえて、日本労農党への入党を拒んでいた。


 では、道平は信長に敵対するのか、といえば必ずしもそうではない。

 やはり義兄弟という縁があるし、信長の政治姿勢全てに道平が反発している訳でもないからだ。

 こうしたことから、道平は蝙蝠のような存在だと、他の政党所属の多くの衆議院議員から見られていたのだ。

 

 そして、道平は交錯して真偽が混じった情報が日本本国内で流れる中で、最善の路が何かを探ろうと苦悶していた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >そして、道平は交錯して真偽が混じった情報が日本本国内で流れる中で、最善の路が何かを探ろうと苦悶していた。 一つの政党・派閥・親分(派閥領袖)に忠誠を捧げ、一筋を貫くのも政治家として一つ…
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