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第36章ー5

 ともかくこういった情勢に日本の北米植民地があることは、アフリカはともかく欧州諸国では徐々に察せられることになった。


 日本の南北米大陸の植民地に年季奉公人を輸出(?)しているアフリカにおいて当時、国家が全く無かったという訳ではないが、アフリカにおいては部族国家程度で官僚制度等は整っていない国が多く、当時の欧州のように発達した官僚制度を整えた中世から近世国家があるとは言い難かった。

 その一方で、欧州の国家においては既に中世から近世国家へと徐々に移行、成立しつつあった。

 こうした状況の差が、日本の北米植民地の動きに対して、アフリカがほぼ対応できなかったのに対して、欧州国家が国家として対応できた一因となった。


「ふむ。日本の北米植民地では日本本国に対する反発が起こりつつある。更にその原因だが、日本本国が年季奉公人、特に外国からの年季奉公人を禁圧しようとしつつあることにあるということか」

「御意」

 イングランド女王エリザベス一世の前で、ウィリアム・セシル大蔵卿は頭を垂れながら問いに答えた。

「それで、我が国はどのようにすべきと考える」

「言うまでもなく、北米植民地に味方すべきです。さすれば日本の国力を大いに削れるでしょう」

 女王の問いにセシルは即答した。


「ふむ。間違ってはおらぬが。どう味方するのだ」

「そうですな。ここは傭兵を提供するというのはどうでしょうか。我が国にも利益になるでしょう」

「傭兵とな」

「ええ」

 セシルは女王に長々と説明した。

 以下は、その要約になる。


 我がイングランドの国防、更に発展のカギは海軍とそれによって保護される商工業にある。

 イングランド海軍が欧州で最強海軍の一角を占めるようになれば、イングランドは大いに発展していくだろう。

 その目的を果たすために、イングランドの海軍軍人やその志望者を、北米への傭兵として提供する。

 彼らは北米植民地で海軍の一員として働き、貴重な戦訓や技術を我がイングランドにもたらすだろう。


「うむ。それは良い考えだ」

 女王は納得し、セシルにその方向で動くように指示した。

 そして、イングランドからはフランシス・ドレークらが北米植民地の傭兵として赴くことになった。


 一方、スペインでは渋面を浮かべた国王フェリペ2世の前で、一人の貴族が頭を垂れていた。

「アレッサンドロ・ファルネーゼよ。本当に赴くのか」

 フェリペ2世は渋面を浮かべたままで言ったが。

「御意。このままではスペイン軍は日本軍に勝てません。日本を打ち破るには日本のことを内部からも知る必要があります。そして、日本の北米植民地に不穏な動きがあるとか。私は傭兵として北米側に参加して日本のことをより知ろうと考えます」

 アレッサンドロはそう答えた。


「庶子の子とはいえども、朕の甥でパルマ公爵という高位の身で傭兵になることなどあるまい」

 フェリペ2世は甥を更に諫めたが、アレッサンドロは頑なだった。

「叔父上、ジブラルタルに日本の旗が掲げられているという屈辱をいつまで甘受するつもりですか。そして、今のスペイン軍にジブラルタルを奪還できる力があるとお考えですか。銃一つとっても、スペイン軍は未だにマスケット銃が主力、それに対して、日本軍は連発式のライフル銃に機関銃が主力です。マスケット銃で、日本軍の銃に勝てる訳がないでしょう。我々は武器を改善し、様々な改革を行わねばならないのです。そのためにも私は傭兵になる覚悟です」


「うむ」

 甥の言葉に道理がある以上、フェリペ2世もそれ以上はこの甥を引き留められなかった。

「分かった。くれぐれも身をいとえよ。そして、スペイン軍の将兵を伴え」

 こうして、アレッサンドロ・ファルネーゼらは北米へ向かった。

 感想欄で指摘を受けて、誤解を招く描写になっていたことから、一部修正しました。

 そのために感想欄と描写が異なる事態になっていることについて、心からお詫びします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 流石、イングランドの処女(自称)女王と、スペインのフェリペ2世。判断が素早く的確。双方とも間違いなく名君。(味方するのは反対側だが。) 「歴史にIFは禁物だが、もし皇軍が来訪せざれば、双…
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