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第34章ー5

 その後、一通りの走行訓練、射撃訓練等を今日の所は完全に終えた、との上層部の判断が下され、今日の戦車を使った訓練は終わった。

 ちなみに島津家久中尉が、この訓練を見学に来た理由だが。

 家久中尉は歩兵小隊の小隊長として、戦車部隊の訓練を見学すると共に、戦車に対する対抗手段を現場の部隊指揮官として検討するために来ていた。

 とはいえ、実際にそんな必要があるのだろうか、そう家久中尉としては考えざるを得ない。

 何しろ、それこそ世界中を探しても、戦車や軍用機を実際に量産して装備できるのは日本だけなのだ。


 家久中尉は、自分の目の前にある戦車を改めて眺めた。

 装甲は最大で13ミリといったところであり、総重量は約6トン程で、乗員は3名の戦車か。

 まだ存命している皇軍関係者に言わせれば、それこそ豆戦車と言って、戦車としては最低限の性能を持つ車両らしい。 

 とはいえ、自分たちが持っている小銃では、この戦車の最大装甲を撃ち抜くことはまずできない。


 自分たちが使用している小銃は、6.5ミリ口径だ。

 勿論、人や馬を撃つことを考えれば、これで全く問題がない。

 そして、日本以外の国の軍隊が戦車等を装備しているというか、装備できる筈がない。

 更に言えば、レンガ塀越し等での撃ちあいが可能なように、7.7ミリ口径の小銃を採用して、更に銃弾を軽機関銃や重機関銃と共通化するという案も検討されたらしいが、人や馬を撃つのなら、軽機関銃も6.5ミリ口径で十分だとの意見が強く、結果的に6,5ミリ口径の小銃や軽機関銃が採用されている。


 だが、戦車の装甲を撃ち抜くとなると話は変わってくる。

 7.7ミリ口径なら特殊な強装弾を使えば、15ミリ程度の装甲板を撃ち抜けるらしい。

 そう言ったことを考えると6.5ミリ口径でなく、7.7ミリ口径の小銃弾ならば、と思えてくる。


 そんなことを家久中尉は考え、更に実際問題としては戦車を破壊するとなると、手榴弾等を使うしかないのだろうな、と自分の考えを無言で進めていると、上里清少尉が家久中尉の素性に気づいたようで、声を掛けてきた。

「島津家久中尉ではないでしょうか」

「その通りだ」

 特に否定する理由もなく、率直に家久中尉は上里少尉の問いかけに答えた。


「如何です。戦車対策を何か思いつきましたか」

「いや、まだ色々と下検討をしている。それにしても戦車対策が必要なことがあるのか」

 上里少尉の言葉に、家久中尉は疑問を呈した。


「仰られる通りの筈ですが、色々と裏事情があるようです」

 上里少尉は事情通のような言葉を発した。

「それは何かな」

 家久中尉は軽い気持ちで尋ねた。


「北米植民地の問題ですよ。北米植民地では戦車や軍用機の開発、試作が始まったらしいです」

 上里少尉は声を潜めながら言い、その言葉に家久中尉は息を呑んだ後、考えを進めた。

 幾ら何でもと思われるが、上里少尉の立場からすれば、裏情報が入ってきてもおかしくない。

 そして、北米植民地のこれまでの態度を考えていくと、北米植民地は日本本国からの分離独立を考えており、そのための軍備強化の一環として戦車や軍用機の開発、試作を始めたのか。

 その話が本当で、実際に北米植民地が独立する方向に動いているならば、日本本国としてはそれを潰そうと動かざるを得ない。


「私は異母姉が絡んでいる以上、その情報が嘘だと考えたいです。ですが、異母姉の無軌道を散々に聞かされてきましたからね。軍人としては備えない訳には」

「全くだな」

 家久中尉は、上里少尉の異母姉の武田(上里)和子の所業を考えると、それ以上の言葉をどうにも今は言えなかった。

 家久中尉は、更に考えを進めた。

 本当に対戦車戦闘の準備を、自分達は進める必要がありそうだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >人や馬を撃つのなら、軽機関銃も6.5ミリ口径で十分だとの意見が強く、結果的に6,5ミリ口径の小銃や軽機関銃が採用されている。 まあ、史実世界でも、口径7.7ミリは99式軽機関銃、99式…
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