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第30章ー5

 1574年7月16日に日本本土各地から第1回衆議院議員選挙で当選した衆議院議員達は、相次いで議場での登院を果たすことになっていた。

(時代が時代なので)京近辺の議員の多くについては自動車で京の都にたどり着いていたが、それ以外の多くの議員は大坂港に貨客船で向かい、大坂港から鉄道を使って京の都に入るという経路を取った。

 純粋に鉄道を使って京の都に入った議員がいないことは無かったが、それこそ東は美濃から赴く議員がもっとも遠く、西は備中から赴く議員がもっとも遠いという有様だった。

 だから、安芸の選挙区から衆議院議員に選出された小早川道平は大坂港に上陸した後、大坂港から鉄道を使って京の都に赴くことになった。


 そして、7月6日に京の都に入った道平は異母姉になる織田(上里)美子の下を表向きはまずは訪ねることになった。

 勿論、道平が本当に逢って胸襟を開いて話し合いたい相手は、義兄になる織田信長だったのだが。

 大っぴらに逢いづらい事情というモノが、お互いにあったのだ。


「道平、本当に労農党に入るつもりはないのか」

「すみませんが、私は無所属議員を貫くつもりです。そうしないと安芸の選挙民が色々と」

「フン、厄介なことになっておるな」

 信長と道平、義理の兄弟はそんな会話をまずは交わすことになった。


 道平の本音としては、義兄の信長に味方して労農党に入りたかった。

 だが、それを道平がやると安芸の選挙民が怒りかねないのだ。

 信長は選挙に勝つために、京の都を中心とする法華宗の寺院に演説会場を提供してもらうための会場費名目で寄進をし、又、法華宗徒に寄り添うような選挙活動をした。

 そして、このことが安芸に伝わったことから、法華宗徒に敵意を持っている多くの安芸の本願寺門徒の間で信長に対する反感が生じるという事態が起きたのだ。


 しかも、その反感を抱いた面々の中には、厄介なことに道平の義兄である小早川繁平までがいた。

(道平の妻である永子の異母兄に繁平はなる)

 繁平は盲学校を卒業した後、本願寺で仏道修行に励んだ末に本願寺派の僧侶になった。

 そして、安芸に戻ってきて、とある本願寺派の寺で住職を今は務めていたのだ。

 道平が衆議院議員選挙に出馬を決めた際には、繁平は(失明していることから名誉職に近かったが)後援会の会長を務めてくれた程だった。

 その繁平らが信長に反感を抱いているという事情から、道平は労農党に入ることができない事情が生じていたのだ。


 更に言えば、実は道平の支持基盤の一つである海軍の面々とも、信長の仲は悪かった。

 10年余り前になるが、中南米において日本とスペイン(及びポルトガル)が戦争に突入した際、信長が率いている大日本帝国全労連は、海軍が日本の商船を対スペイン戦争のために徴用しようとするのに対してきちんと補償費用等を払え、と猛烈な運動を行ったのだ。

 そのために対スペイン戦争において、商船の徴用が進まないという事態が起きてしまった。


 信長にしてみれば、それは10年以上前のことだし、日本は対スペイン戦争で結果的に圧勝しているのに、未だに海軍の面々は拘っているのか、海軍の面々というのは全く尻の穴の小さい奴らだ程度にしか考えていないのだが。

 実際に商船の徴用を妨害された海軍の面々にしてみれば、それなりに信長らに対して恨みを覚えているのは当然の話だった。

 更に付け加えれば、この妨害によって陸海軍どちらが優先して商船を徴用するのか、という事態にまで発展してしまい、基本的に日本に優勢裡に戦局が流れたことから、流石に表立った事態にまではならなかったが、陰では陸海軍の実務担当者が(言葉での喧嘩ではあったが)大喧嘩する事態までになったのだ。 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 史実世界の明治より人口希薄なこともあり、鉄道は大体、倉敷近辺から、大坂、京都、西は大垣あたりまで。 まあ、妥当な所だと思いますね。貨物は内航航路の方がスピードは兎も角、経済性は良さそう。 …
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