第27章ー12
更にこういった植民地の成立事情の違いから、豪州等では植民地の発展は徐々にやっていけばいいという気風が強く、中南米大陸等では日本本国と基本的に協調して発展していこうという気風がある一方で、北米大陸及びカリブ諸島では自らの力でそれこそ外国と戦ってでも積極的に発展していこう、というよく言えば開拓心溢れる、悪く言えば日本本国の意向を気にせずに突き進む気風に溢れていた。
こうした背景が、北米大陸及びカリブ諸島の日系植民地において、日本本国を無視してでも、欧州やアフリカの住民を何とかして移民させて手に入れようという動きへとつながったのだ。
(尚、それを間近で見せられた中南米大陸の日系植民地も、後でこの移民の動きを自らも取り入れて、植民地の更なる開拓を行うことになる)
そして、もう一つ、北米大陸及びカリブ諸島の日系植民地が独自に発展したい、と望む要因があった。
それは皇軍知識による探索もその一因となっているが、日本人の入植者が五大湖周辺にまで到達して、更にその近辺のアパラチア炭田やメサビ鉄山等を発見したことだった。
こういった炭田や鉄山を利用して、北米大陸の植民地は積極的な工業化を図り、独自に最新兵器の製造まで目論むようになったのだ。
更にカリブ諸島の植民地化によって米の生産も見込めるようになり、工業化が進捗しても食料を自給自足するどころか、米の輸出までもできるのではないか、という見通しが立つようになっては。
日本本国を無視して北米大陸が自立してもやっていける、という考えが北米大陸の日系植民地内に広まるのも無理はなかった。
だが、そこまでのことをやるとなると、それこそ農地を広げるための農民が必要だし、鉄鉱山や炭田で働く作業員も必要になってくる。
また、工場で働く工員も必要不可欠である。
だが、日本本土から北米大陸を目指す移民は激減している。
その現実を冷静に見れば見る程、それこそ毒を食らうことになるかもしれないが、欧州やアフリカからの移民を促すべきだ、という考えに北米大陸の日系植民地が染まるのも当然だった。
(更に言えば、旅程等の関係から日本本土から北米大陸東岸やカリブ諸島に日本人の移民を呼ぶよりも、欧州やアフリカから移民を招き入れた方が遥かに安くつく、という現実があった。
工場で細かい作業をさせるのならともかく、農場での小作人や鉄鉱山や炭田での作業員ならば少々言葉が最初は通じにくくとも、何れは慣れて働くようになるだろうという、史実で南北米大陸等の植民地がアフリカからの奴隷を招き入れたのと似たような理屈を、北米大陸の日系植民地はこねた)
余りにも本編の現在から話がズレるので、この辺りで止めるが。
こういった事情から、ジブラルタルが日本の租借地となって1年も経たない内に、ジブラルタルを拠点として北米大陸の日系植民地から欧州や北アフリカに対して移民を求める動きが起こるようになる。
移民として来てくれるのなら、前借金として渡航費用は負担する等の好条件を前に、欧州では失業していた元職人やデフレ下での租税負担に苦しんで貧窮化した農民等が応じるようになった。
また、欧州内のモリスコやロマといった少数者が迫害から逃れるために応じる例も多発した。
また、北アフリカでもこうした動きを横目で見たことから、現地の奴隷商人が年季奉公人名目で人を集めては、南北米大陸やカリブ諸島に人を送るようになった。
この動きは徐々に増大する一方になり、1年に10万人以上が欧州やアフリカから南北米大陸等へと向かう人の流れを生み出すことになった。
そして、この移民の増大によって南北米大陸等の日系植民地は大きく変質することになっていった。
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