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第27章ー9

 尚、この日本とスペインとの外交交渉だが、本来は事実上でも参加して当然なのに完全にハブられたのが松平家の軍勢の面々だった。

 何しろ日本本国政府の指示を無視して独断専行して、ジブラルタル攻略を彼らは果たしているのだ。

 だから、彼らはこの外交交渉からハブられて当然の立場と言えるが。


 とはいえ、春日虎綱らはともかく、特に鈴木重秀はこの点にかなり不平を鳴らした。

 何しろジブラルタル攻略の為に血や財貨を費やしたのは自分達なのだ。

 日本政府は一枚の銅貨すら費やさず、一滴の血も流さずに自分達の戦果を横取りしようとしているように鈴木重秀には思えたのだ。

 だが、その不平が近衛前久太政大臣にまで届いたことから。

「それならば、この度の松平家等の軍勢の行動は、日本国政府の指示を無視した以上は、叛乱行為であると認定して、「三笠」で攻撃を加える」

 と近衛太政大臣が警告したことで、鈴木重秀も流石に口をつぐんだ。


 更に織田(上里)美子も公私双方の立場から、鈴木重秀を説得した。

 織田美子は、公的には従三位尚侍の地位を持つ存在であり、私的には三条公頼の死後養女となったことから、三条公頼の三女である如春尼を介して本願寺顕如の義姉になる。

 また、織田美子は、言うまでもなく武田(上里)和子の異父姉でもある。


 こうした縁等を駆使した末に、

「私の顔に免じて、何とか矛を収めてください」

 とまで最後は織田美子は鈴木重秀に言ったことから、さしもの鈴木重秀も、

「無位無官の私が従三位尚侍の頭を下げさせた、と言われては、私の男がすたりますし、今上(正親町天皇)陛下の御稜威をも穢したことになります。もうこの件で不平は決して申し上げません」

 と逆に頭を下げることになった。

 かくして、松平家等の軍勢を宥めることに、織田美子は成功したが。

 織田美子としては溜息ばかりを吐くてん末になってしまった。


 もっとも、織田美子(というかその周囲の面々)にとって、このゴタゴタは必ずしも悪いことばかりでは無かった。

 このゴタゴタを解決しようとして話し合う内に、南北米大陸の日系植民地が深刻な問題を引き起こしているのが分かったからだ。

 その問題は何か、というと人手不足だった。

 日系植民地の開発を更に進めたいのに、人が集まらない事態が引き起こされつつあったのだ。


 さて、そもそも論になりかねないが。

 日系植民地の開発は、日本人が主導して行われており、それに原住民の協力を求めて行われてきた。

 そして、この植民地開発の原動力になっていたのが、日本本土からの移民だった。

 だが、この1568年当時、南北米大陸の日系植民地へ日本本土から赴く人は減少していた。

 特に北米大陸において、この問題が深刻化していた。


 その原因だが、次章で主に述べるが、1560年代半ば以降にオーストラリアやニュージーランドでゴールドラッシュが起き、日本本土から一獲千金を夢見る移民がそちらに向かった、という事由があった。

 更に北米大陸に主に赴いていた東海や甲信、更に南関東の住民や法華宗徒等が、地元開発等に勤しむようになったという日本本土の事情があった。

(南米大陸への移民は奥羽越や北関東の住民が多く、まだまだその地元では移民に夢を託す者が多かった)

 

 更に南北米大陸の原住民の間では、相対的にだが日本人やスペイン人等が持ち込んだ麻疹等を始めとする疫病が致命的な代物になっており、原住民の大幅な減少をもたらしていたという事由もあった。

 こうしたことから、日系植民地の開発を更に進めるためにヨーロッパやアフリカから何とか移民をかき集めたい、それこそ住民を奴隷にしてでも、という状況が北米大陸を中心に引き起こされてしまうことになってしまった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >日本政府は一枚の銅貨すら費やさず、一滴の血も流さずに自分達の戦果を横取りしようとしているように鈴木重秀には思えたのだ。 確かにその通りなんですが、ジブラルタルは 民営の植民地=維持コ…
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