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第27章ー8

 1568年中に日本とスペインの間で無期限の休戦条約を締結するという方向は決まったが、その内容については本当に難航せざるを得ない事態となった。

 スペイン国王のフェリペ2世以下の面々についても、現状は良く分かってはいる。

 だからこそ却って容易な妥協が日本との間ではできない、という事態が引き起こされたのだ。


 この1568年現在の日本対スペイン戦の現状を言えば、既に中南米大陸及びカリブ海に建設されていたスペイン(及びポルトガル)の植民地は全て失われていると言っても間違いでは無かった。

 何しろこれ以前にスペインによって建設されていた中南米の主な植民地、メキシコ及びペルーに展開していた全てのスペイン軍は、総司令官のアルバ公の決断により無条件降伏を受諾している有様だったからだ(尚、ポルトガルの植民地も五十歩百歩の惨状を呈していた)。

 勿論、アルバ公の指示を拒否して日本との戦いを続けているスペイン軍(また、ポルトガル軍)の部隊、兵士が皆無になっている訳では無いが、現実としては最早、日本に脅威を与える程の規模で存在しているかというと、とてもそんな規模では存在しない有様になっていた。

 だが、その余りにも苦い現実が、スペイン王国にはどうにも受け入れづらかった。


 取りあえず日本とスペインの領土、植民地はお互いに尊重されることとし、その線は現状追認という方向で話を進めるということで、日本は進めたいと考えたが。

 この点で大揉めに揉めることになったのが、ジブラルタルである。

 ジブラルタルだが、春日虎綱らは暴挙と言えば暴挙だが、侵攻前にいた住民全てを追い出していた。

(これは住民がスペイン軍と通謀して利敵行為を図ることを警戒してのもので、軍事的合理性から言えば極めて妥当な行動だった。

 尚、春日虎綱らはジブラルタルの住民を戦禍に巻き込まないための人道的措置であると言い張った)

 このために現在のジブラルタルにいるのは日本人ばかりと言える状況にあった。

 これを根拠として日本側としてはジブラルタルを日本領とすることを主張した。


 だが、これをスペイン側が素直に呑めるわけが無かった。

 それこそ、ジブラルタルが日本領になり、そこに日本艦隊や私掠船団(海賊)が常駐するようになっては、スペイン沿岸が常時、日本の脅威に晒されることになる。

 また、西地中海や北大西洋における日本の脅威も格段に向上する。

 何しろジブラルタルは文字通り、地中海と大西洋をつなぐチョークポイントなのだ。

 そこを日本が抑える等、スペインのみならず西欧諸国の要人全てが真っ青になりかねない話だった。


 だが、現実にスペインが武力でジブラルタルを強引に奪還できるのか、となると極めて難しいという現実がある。

 それに日本としても、南北米大陸からスペイン、ポルトガルを追い出しておいて言うのも何だが、欧州本土の一部まで日本の領土とするのは、今上(正親町天皇)陛下の平和を求める大御心に余りにも背くのでは、という意見が、織田(上里)美子尚侍を中心とする特使団の一部から出たことから。


 ジブラルタルはスペインの領土であることを日本は認めるが、ジブラルタルを日本の租借地として軍事基地を置くことをスペインは認める、というある意味、玉虫色の結論がジブラルタルには出た。

 その代りに、日本はジブラルタルの租借料をスペインに払うことになった。

(もっとも、南北米大陸全体等から1561年にスペインが上げていた収益の1パーセントにも満たない涙金であり、裏返せば南北米大陸等からスペインが完全撤退することを暗に認めることにもなった)。

 そして、それ以外は現況で日本とスペインは無期限の休戦条約を結ぶことになった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 確かにチョークポイントではあるけれど、地球の裏側に経済的利益を齎さない軍事拠点を建設し、そこに数多の兵と艦艇を常駐させることの負担を考えたことがあるのだろうか。 地中海側に経済利権を確保でき…
[良い点] >そこを日本が抑える等、スペインのみならず西欧諸国の要人全てが真っ青になりかねない話だった。 例えばですが、テヴェレ川河口から僅か約25kmしか離れていないサン・ピエトロ大聖堂(建設中)…
[一言] このタイムライン物凄い。 日本無双!ですねw
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