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第27章ー7

「さて、クルチ・アリが死んでも通行料を支払え、と言ってきた以上、アルジェに通行料を払うか」

 そううそぶいて、鈴木重秀はアルジェ市街にありったけの艦砲射撃を加えた。

 当然のことながら、アルジェ市街に大火災が起きた。

 そのために大量の死傷者もアルジェ市民に出た。

 その上で、鈴木重秀はアルジェの政庁に通告した。


「クルチ・アリが死んでも通行料の支払いを求める、と言って来たので、実弾でアルジェに払わせてもらったのだが。まだ、通行料の支払いをする必要があるか」

「いえ、もう不要です。もう永遠に通行料の支払を日本に対して求めないことを、アルジェはアラーの神に対しても誓約します」

「そうか、日本はまだまだ通行料の支払をする用意があるぞ。もっと通行料を実弾で支払おうか」

「お断りします。というか、もう通行料の支払はしないで下さい」


 アルジェの政庁にしてみれば堪ったモノではない。

 日本に対して通行料の支払いを請求したら、通行料として実弾が大量に降ってきたのだ。

 アルジェというかバルバリ海賊の歴史において、ここまでの相手はかつて存在しなかった。

 というか、世界の海賊史上に名を残すほどの遣り口だった。

 鈴木重秀は、この一件で世界の海賊史に残る悪名を轟かせたと言っても過言では無かった。


 その悪名が、結果的にコンスタンティノープルにまで届いた結果、近衛前久太政大臣と織田(上里)美子は急きょスペインへ、ジブラルタルへと「三笠」で急行することになった。

 尚、アルジェを結果的に焼き払った後、鈴木重秀は補給等の必要もあって艦隊を率いてジブラルタルへと帰港していた。

 そして、流石に事前に準備していた砲弾の多くを射耗していたことから、北米から砲弾等の補給が届くのを鈴木重秀らは待っている段階にあり、チュニス等に2回目の挑発行為が行われる前に「三笠」はジブラルタルにたどり着くことが出来た。


 そして、近衛太政大臣は自らの権威で何とか強引にジブラルタルを占領していた春日虎綱らにスペインとの停戦、及び鈴木重秀らに対してバルバリ海賊への停戦だけは呑ませたが、その後始末に苦慮した。

 スペインやバルバリ海賊と停戦(より正確に言えば、日本から停戦交渉を申し入れた段階)したといっても、これは取りあえずのことに過ぎない。

 それこそ、今後の領土関係を始めとして解決しないといけない事案が山のようにあるのだ。

(このために陰では、さしもの近衛太政大臣も、

「ここまでのことが起こると分かっていたら、二条晴良にオスマン帝国行きを最初から任せていた」

 と愚痴る有様になってしまったが、愚痴って済ませる訳には行かない)

 かくして、スペイン王国政府、及びバルバリ海賊と急きょ、近衛太政大臣らは外交交渉に当たることになってしまった。


 まず、スペイン王国政府との交渉について述べるならば。

 さしも強気をもって鳴るスペイン国王フェリペ2世もここまでの事態、イベリア半島の一角といえるジブラルタルが日本の占領下となったといっても過言ではない状況になって、更にそれを奪還する目途が全く立たないと言える事態になったことから、意気消沈してしまっていた。

(何しろ、ジブラルタル封鎖を目指したスペイン艦隊は大敗しており、また、陸上からのジブラルタル奪還を目指した陸軍にしても、たった1回の総攻撃で具体的な戦果を何も挙げられないままでその将兵の過半数が死傷するという大敗してしまったのだ)


 完全な講和条約締結は自らの面子があるので決してできないが、期間を無期限とする一時的な休戦条約締結ならば応じる用意があるという強気な態度を最初は示した上で、フェリペ2世は近衛太政大臣との交渉に向かうことになったのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >チュニス等に2回目の挑発行為が行われる前に「三笠」はジブラルタルにたどり着くことが出来た。 近衛太政大臣らの主観では、 「北米のヤンチャな連中が無茶をしでかしたので、火消しの為に、必死…
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