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第25章ー12

 浅井長政夫妻としては、カイロ領事でもある宇喜多直家からの日本への帰国勧告が出次第、すぐに日本へと帰国するつもりだった。

 宇喜多直家から内報があったとはいえ、自分達が日本から呼び寄せた人より先に日本へと帰国する訳には、という考えからの二人の判断だったのだが、それは宇喜多直家と木下藤吉郎の謀略を完全に成功させる一助に結果的には成ってしまった。


 浅井長政夫妻は不審を覚えていた。

 あの時の宇喜多直家の口ぶりだと、それこそ3日以内には日本への帰国勧告が出る気配だったのに、5日経っても日本への帰国勧告が出ないのだ。

 宇喜多直家に尋ねると、ことが事なので慎重に判断しているとのことで、それならばと二人は一応は得心していたのだが。


「浅井長政殿、この際はオスマン帝国相手に一戦を交えて、エジプトを独立させましょうぞ」 

 赤尾清綱が、まずは浅井長政の下に押しかけて来た。

「海北綱親や雨森清貞も同心しました。我らが音頭を取れば、旧浅井家中の面々は皆、我らと行動を共にするでしょう。どうかご決断を」


「浅井長政殿、どうか旧六角家中の想いを汲んで同心して下され。六角家が滅んだ後、我らは帰農して生き恥を晒してきました。それが、エジプトに来て開発に協力してくれないか、と御声を掛けて頂き、ここに来ることで改めて生きる喜びを感じてきました。それが、此度のことで日本に帰国するとのこと。ここまでの開発の労苦を無にするのは余りに無念。旧六角家中の面々一同、浅井長政殿を新たな主君として仰ぎ奉り、エジプト独立の為に奮闘する旨の起請文を書きました。どうかお納め下され。そして、我らの想いに従って蹶起して下され」

 後藤賢豊も起請文を持参して、浅井長政の説得に訪れてきた。


 そこにトドメを刺すかのように、宇喜多直家が再度、浅井長政夫妻の下を訪れた。

「私が密かに入手したオスマン帝国の治安担当者への指示文書です。浅井長政夫妻を秘密裡に拘束せよ、更に抵抗するなら殺害せよ、との秘密命令が下ったようです」

「何と」

 今なら、カイロ近郊にいる日本の商船に駆け込めば、日本に帰国できるかもしれない。

 だが、古スエズ運河はそう広くなく、商船ではオスマン帝国軍の銃砲撃を浴びては一たまりもない。

 そう言うことから考えるならば。


「是非も無し」

 浅井長政はエジプト独立の為に動くことを決断した。

 お市も事ここに至っては覚悟を決めた。

「丹羽長秀と柴田勝家に頼みましょう。スエズ運河警備隊の武器庫を開いてもらい、更にエジプトの住民から兵を募って、速やかにオスマン帝国軍と戦うための軍備を整えるのです」

「そうだな」

 お市の言葉に長政は肯いた。


「エジプト独立の為に私は動く。宇喜多直家殿、祖国日本を裏切ることになるが、私の頼みに従って動いてくれぬか」

「喜んで動きますぞ」

 浅井長政の決断を諒として、宇喜多直家は即座に各方面に使者を走らせた。


「「浅井長政殿が決断した。我らも動くぞ」」

 旧浅井家中と旧六角家中、要するに近江衆のほぼ全員が浅井長政の決断に呼応した。

 こうなっては、近江衆以外の美濃、尾張、伊勢等の面々も動かざるを得ない。

(特に尾張の面々にしてみれば、お市までも長政に積極的に加担して指示を出した以上、積極的に長政とお市に加担しようという心理に駆られることになった。

 丹羽長秀や柴田勝家に至っては、浅井長政の書簡に添えられたお市からの書簡を読んで、浅井長政殿の英断に同心すると叫ぶ有様だった)


 エジプトの多くの村落で日本人の指導の下、速やかに兵が募られることになった。

 この当時のエジプトの人口は400万人から500万人といったところであり、すぐに万を超える軍勢が集う事態が引き起こされた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「是非も無し。」 戦国武将らしくてカッコいい。 浅井長政、遂に立つ。開戦の経緯はおいておいて、いざ、戦になったら、やる男です。 史実世界では、 若干15歳にして、倍以上の六角家の大軍を…
[一言] 一報聞いたら正親町天皇卒倒しそうだな
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