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第23章ー13

 少し横道に入って、史実とは異なるこの世界のエジプト情勢の説明を数話掛けてします。

 とはいえ、そんな出来立ての豆腐をワーリー府で作ることは流石にできないので、実際にはワーリー府に赴く前に作った豆腐を、上里勝利はソコルル・メフメトに持参せざるを得なかった。

 勿論、この時代の儀礼として、それなりの(現代だったら賄賂と言われるだろう)他の金品も、手土産として勝利は当日にはワーリー府に持参している。


 その一方で、勝利がカイロ出張所に着任してワーリー府に手紙を書き、更にその回答が届いて、実際の面会日が決まるのには、それなりの時間、日にちが掛かるのは止むを得なかった。

 その間は勝利は手持ち無沙汰で、ボーっとした日々を送れていたかというと、そんなことはなく。


(この世界の)エジプトの実情について、従来からの従業員に色々と聞いたり、カイロ出張所の様々な資料を当たる等の猛勉強を勝利はする羽目になっていた。

 何しろ「皇軍来訪」から約20年が経っており、皇軍が持っていたオスマン帝国の資料(と言っても、数十冊程度の百科事典に毛が生えた程度の資料しか、史実世界の歴史に関しては皇軍はこの世界に持ち込んではいなかった)は、完全に役立たずになりつつあったからだ。

 例えば。


 史実のこの頃のエジプトだが、1517年に当時のエジプトを統治していたマムルーク朝をオスマン帝国が征服したからと言って、オスマン帝国の他の直轄領と同様の統治がエジプトにおいてなされたのか、というと全くそんなことは無かった。

 マムルーク朝において、エジプトの統治を担っていたといえるマムルークは、オスマン帝国の統治に入った後のエジプトにおいて、未だに強大な力を秘めていたからだ。


(極めてややこしい話になりかねないが、マムルークとは本来はイスラム世界における軍人奴隷を指す言葉であり、マムルーク朝はその軍人奴隷が王朝を開いたことから、マムルーク朝という名で他から呼ばれていた。

 そして、マムルーク朝においては、国王と言えるスルタンは必ずしも世襲ではないどころか、世襲されない方が当たり前であり、後期のマムルーク朝に至っては、多くのマムルークを抱えた個々の有力なアミール(将軍)間の互選によってスルタンが選ばされるという選挙王制にまで至っていた。

 だから、オスマン帝国がマムルーク朝を征服した際にも、全てのマムルークがマムルーク朝に殉じるようなことは全くなく、実際には多くのアミールと共にマムルークがオスマン帝国側に寝返って、エジプトにおける影響力をある程度は温存することに成功した。


 更に史実では、オスマン帝国の統治下にエジプトが入った後も、エジプトの実際の行政における官僚の多くをマムルークが占め続けたことや、更に従前からの軍事力をマムルークは治安維持等の名目でかなり保持することに成功したことから。

 オスマン帝国統治の初期の頃は、マムルークによる反乱が複数、発生して、その度にオスマン帝国がそれを武力鎮圧することでマムルークの勢力を削いだものの、それによってマムルークの息の根を止めるどころか、しぶとくマムルークは息を吹き返す事態が起きた。


 更にオスマン帝国の統治の失策として、ワーリー(エジプト総督)が首都から遠く離れたエジプトの地で力を蓄えて、反乱を起こすことを警戒する余り、ほぼ1年毎にワーリーを任免したことが挙げられる。

 確かにエジプトの富を考えれば、ワーリーがエジプトで力を蓄えて反乱を起こすことを警戒するのも分かるが、物には限度がある。

 このワーリーの頻繁な任免は、オスマン帝国のエジプトの行政において地元勢力、つまりマムルーク等への依存を高めて、また、エジプトの行政において文官よりも軍人に頼る傾向を強めるということになってしまったのだ)

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― 新着の感想 ―
[良い点] オスマントルコ帝国程の超大国ですら、皇軍来訪世界では史実世界との歴史が大きく乖離。 歴史の慣性力(そんな言葉があるかどうか分からないが・・・)は大きい国ほど強く働く筈で小国は小さいショック…
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