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間章ー1 島津家と近衛家の接触

 間章で、島津家と近衛家の裏の接触話になります。


 なお、忍びの者と近衛植家が話す際について、方言というか日常会話の言葉の問題から、この二人の会話は絶対に不可能だ、という多大なツッコミの嵐が起きそうですが。

 忍びの者の特技で方言は無視できる、等の脳内補完で勘弁してください。

(というか、そうでも考えないと忍びの者自体が方言ですぐに見破られてしまい、活躍が不可能な気が)

 島津貴久と牟田口廉也中将の面談が行われた翌日、島津家の遣っているいわゆる忍びの者の1人が、京の都に向けて急行することになった。

 それは、島津家の主筋といえる近衛家に皇軍の存在と意図を急報し、更に朝廷や足利幕府にも皇軍の存在を知らせるためだった。

 これは、島津家の皇軍に対する面従腹背の行動の一環だった。


 なお、余談だが、これに合わせて、島津家の遣っている使僧の1人も、京の都に急行している。

 だが、皮肉なことに使僧の足が、忍びの者程は速くなかった為に、使僧が京の都にたどり着くどころか、須磨の辺りにたどり着いた時点で、(後述するが)皇軍の大阪湾上陸作戦が先に始まるという、ある意味、極めて間抜けな事態が起きた。

 そのために、島津家の書状を携えた使僧が、苦心惨憺の末に近衛家の下にたどり着いたのは、皇軍が京の都を占領した後ということになり。

 この当時の近衛家の当主の近衛植家から、使僧は何故にもっと急がなかった、と叱られる羽目になった。

 それはともかく。


 忍びの者が近衛家にたどり着いたのは、皇軍の使用している暦で言えば、1542年1月30日、この当時の旧暦で言えば、天文10年1月5日のことだった。

 つまり、近衛家にしてみれば、正月明け早々と言ってよい時期だった。

 忍びの者といえば誤解されそうだが、所詮は島津家と近衛家の関係からすれば、単なる郵便配達人のようなものである。


 そして、いわゆる下人を介して、忍びの者は、島津家の書状を近衛植家に渡し、返書があれば島津家に持って帰ろう、と漠然と考えていたが。

 その書状の内容は、忍びの者が考えていなかった効果を引き起こした。


「書状を持参された方ですな。こちらにお越しいただきたい」

 そう待つこともなく、丁寧過ぎる言葉を掛けられ、いわゆる座敷に忍びの者は上げられた。

 忍びの者が、半ば目を白黒させていると、明らかに貴人と分かる人物が座敷に入ってきて、

「直答を特に差し許す。この書状の内容を尋ねおきたい」

 と忍びの者に声を掛けた。


(少し補足説明になるが。

 この当時の貴族は、いわゆる無位の庶民と直に話すということは、身分的にありえない話だった。

 だから、無位である忍びの者と貴族が直に問答すると言うのは、本当に予想外の話だったのだ。

 なお、使僧は別の話になる。僧侶であることから、ある意味、身分制の枠外の存在とされていたからだ。

 だから、これはかなりの異常事態といえた)


 忍びの者が、背を伸ばして畏まっていると。

「皇軍という存在が、薩摩に現れたのは間違いないか」

「はっ」

「その武器等が懸絶したもので、更に皇軍は、討幕を訴えていて、島津家に協力を仰いだのも、間違いのない話なのだな」

「はっ」

「それ故に、近衛家に内報する。更に近衛師団という存在も聞いているが、近衛家に関わりは無いのか、とも書状に書いてあったが、その方は何か聞いていないか」

「いえ、聞いておりません」

 そんなやり取りが行われた。


 なお、これは島津家なりの配慮だった。

 機密保持から、忍びの者は単なる郵便配達人であり、内容の詳細は使僧が伝えるつもりだったのだ。


 忍びの者の目の前の貴人、近衛植家は、溜息を吐きながら、忍びの者に半ば零した。

「我が近衛家は、足利将軍家の縁戚なのだ。皇軍が尊皇の想いに燃えているのを嘉すべきだが、今の足利将軍、足利義晴は私の義兄弟であり、私からすれば甥も産まれている。如何にすべきかのう」


 忍びの者は何とも答えられなかった。

 身分差もあるが、それ以上に目の前の貴人の苦悩が察せられたからだ。


「やれる限りのことをやるしかあるまいが。気が重い話だ」

 近衛植家は、頭を抱え込むしかない現実にどうにも気がめいってならなかった。

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