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第20章ー15

 実際に結果からすれば、陶隆房大佐の言葉の大半が当たることになった。

 メキシコシティまで後30キロも無いというところまで迫った時点で、スペイン軍は日本軍迎撃のために重厚な野戦陣地帯を築き上げていることが判明したのだ。


「どうにも嫌な陣構え(野戦陣地)ですな」

 武田晴信大佐にしてみれば、それこそ甲斐にいた頃から見知っている部下、山県昌景少佐が、目の前に築かれているスペイン軍の野戦陣地帯を目にして呟いている。

 実際、自分もいい気はしないが、かと言って、目の前の野戦陣地帯を無視して、メキシコシティに進撃することは不可能な話だ。


 この野戦陣地帯を迂回することが全く不可能ということではない。

 入念な偵察を行って、大胆な迂回戦術を駆使すれば、この野戦陣地帯を迂回してのメキシコシティ攻略作戦の発動は出来なくは無い話になるだろう。

 だが、余りにも危険が大きすぎる作戦になることが分かり切っている。

 目の前の野戦陣地帯は遠目から見る限りは、万を超える軍勢が収容可能な規模だ。

 こんな軍勢が立て籠もっている野戦陣地帯を無視して、大胆な迂回戦術を伴うメキシコシティ攻略作戦を発動しては、迂回部隊の補給路が切断されて、迂回部隊が全滅する危険が生じる公算が大だ。

 それよりも、目の前の野戦陣地帯を潰して、敵兵に損害を与えての進軍を図るべきだ。


 武田大佐は上杉景虎少佐の意見も聞いた上で、そのように決断して1門当たり10発程(旅団全体で言えば、75ミリ山砲16門から撃ったので全部で160発程)の砲撃の嵐を浴びせた上で、目の前の野戦陣地帯の突破作戦を図ったが。

「そんな、あれだけ砲弾を浴びせた筈なのに」

 武田大佐は、顔色が変わるのを覚えた。


 最初の攻撃作戦は、山県少佐が重傷(もっとも、早期治療が奏功したこともあり、2月程治療に専念する必要はあったが、最終的には山県少佐は後遺症を残すこと無く、再び前線に立つことができた)を負う等、武田大佐率いる旅団に多数の死傷者を出した末に、完全失敗という結末になった。

 さて、何故にこのような結末になったか、というと。


「やはりな。日本軍の攻撃を迎え撃つために、二重に塹壕を掘っておいて正解だったな。今後は二重どころか、三重に塹壕を掘るべきかもしれないが」

 日本軍の攻撃失敗を後方から実見したアルバ公はそううそぶいた。

 そう、この日本軍の攻撃失敗は、アルバ公の智嚢を振り絞った末に編み出された新戦術によって生み出された代物だったのだ。


 アルバ公は緒戦の日本軍(松平元康が率いる民兵隊)との決戦で、自分達が大敗した結果、野戦で日本軍に勝つのは困難と言うより不可能な話だ、と観念していた。

 とは言え、日本軍との戦いを諦めて降伏する等、アルバ公にしてみれば思いもよらない話である。

 それなら自分達はどのように抗戦して、日本軍に対する勝利を収めるべきか。

 アルバ公は智嚢を振り絞った末に新戦術を思い付いた。


 それは自分達のスペイン軍の故智に倣い、野戦を攻城戦にしてしまうことだった。

 とは言え、16世紀の現在、攻城戦は大砲の発達により守備側が苦戦するのが必至になりつつある。

 それならば、攻撃側の大砲を役立たせるのを困難にし、自分達の守備側の大砲が役立たられるようにすれば何とかなる筈だ。


 こうした考えから、アルバ公は攻撃側の目隠し用の土塁を連ねて築き、その後ろに交通壕を兼ね備えた二重の塹壕帯を築いた上で、守備側が敵の迎撃を行えるような戦術を考え付いたのだ。

 土塁なので、敵の砲撃によって崩されるだろうが、裏返せば崩された箇所から敵は攻撃してくる。

 そこに火力を集中して勝利を収めようとアルバ公は考えた末、作戦を実行し勝利を収めたのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 名将、アルバ公、武田の赤備(とはいえ、皇軍では軍装の勝手な塗色は許されないが)を撃退! 皇軍も塹壕を掘りつつジリジリとスペイン軍の塹壕に接近、最後は塹壕の中でシャベルとツルハシ、銃剣で殴り…
[一言] ふむむ、アルバ公もなかなかやりますね。
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