表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
306/1800

第17章ー6

 さて、何故にオスマン帝国から帰国して早々といってよいのに、久我晴通が北米大陸西海岸の日本の植民地に総督として赴く羽目になったのか、というと。

 結局のところ、久我晴通の源氏長者という立場が、植民地統治に好適である、と日本政府上層部から判断されたことによるものだった。

 また、久我晴通がオスマン帝国に赴いて外交交渉に当たった経験があったことから、北米大陸西海岸に赴いた際に、外国(具体的にはスペイン)との外交交渉の任に当たっても、そう大きな過誤を起こすようなことはあるまい、と日本政府上層部に判断されたのもある。


 ともかく、そうしたことから、1554年に久我晴通は、北米大陸西海岸の地を踏みしめる羽目に陥ることになった。

 そして、日本本国から、対スペイン戦争に備えた準備を現地で調えるように指示を受けていた一方で、現地に生じている様々な軋轢の解消に、久我晴通は奔走することになった。


 こうした現状に悩んだ末に、久我晴通は未来からもたらされた知識で、現状解決を図ることになった。

 日本の法令を基本的に北米大陸西海岸の日本の植民地に導入する一方、現地の住民の間で話し合ってできた決まりを、現地の法令として成文化して採用する。

 そして、法令に基づく行政を行うことにし、そのための行政組織を作る。

 更に、刑事事件や民事事件、更には行政事件等を取り扱う司法組織、裁判所を別途、設ける。

 つまり、立法、行政、司法を組織ごとに明確に分けて、処理することにしたのだ。

 これは、皇軍のもたらした三権分立の考えを、この場に合わせたといえる。


 実際問題として、久我晴通が来る以前の北米大陸西海岸の日本の植民地においては、立法は慣習法で行われて成文化されておらず、行政と司法は全く分離されていない、と言われても過言では無かったのが、現実だった。

 これでは、恣意的な行政や、裁判が横行する危険が高く、住民の間に憤懣を高める一方になる原因になっている、と言われても仕方なかった。


 だからこそ、久我晴通は、上記のような改革を行う一方、北条幻庵ら、ある程度、日本本土において行政等に携わった経験のある現地の人材に積極的な協力を呼び掛け、それを現地での公務員として採用して、きちんとした役職に就け、更にきちんと給料を支払う等のことをすることで、更に自分の味方を増やし、北米大陸西海岸の日本の植民地における行政や司法が円滑に動くように努めた。


 何しろ、旧来のモノが全く無い、といっても過言ではなかったのが、この当時の北米大陸西海岸の日本の植民地の実態である。

 そして、下手に植民者を武力で押し付けるようなことをすれば、それこそ対スペイン戦争における前進基地、橋頭堡としての役割を、北米大陸西海岸の日本の植民地は果たせなくなる。

 それを踏まえた上で、久我晴通は懸命に働くことになった。


 そして、この久我晴通の懸命の働きを陰で支えたのが、久我晴通の源氏長者の肩書だった。

 この頃になると、皇軍のもたらした印刷技術がかなり普及していた。

 そのために久我晴通が源氏長者であり、源氏の棟梁だという宣伝が、印刷物により容易に広まった。


 それこそ、この地に赴いている松平家や水野家等々、源氏の末裔を称する家は多い。

 そうした者達からすれば、久我晴通の持つ源氏長者の権威は、そう無視できる代物ではなかった。

 いや、周囲の思惑を考えれば、源氏の棟梁の久我晴通の言うことが、理不尽なものならともかく、そうで無いなら、むしろ積極的に従うべきではないか、という考えを広めることにもなった。


 こうしたことから、1556年頃になると、北米大陸西海岸の日本の植民地での混乱が収拾する傾向を示すようになったのだ。

 この頃の史実では、源氏長者という肩書には、そう重みは無かったようですが。

 宣伝で人の意識が変わるということは、よくあることということでお願いします。


 ご感想等をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ