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第17章ー3

「ともかく、松平家の面々にしても、今川家にはそれなりどころではない縁があるからな。義元殿が、わしの姪を養女にし、竹千代殿の嫁として嫁がせたい、と言って来られては、断りづらいのよ。早速、それなりの金や人等が、今川家から送られてきておることもあるしな」

 北条幻庵は、この北米大陸に赴いている北条家の事実上の頭領等として、把握している情報を言った。


「ほう、金や人が」

 武田晴信少佐は、合いの手を入れながら、懸命に頭を回転させた。


 武田少佐が、北条幻庵を訪ねたのは、この手の情報を裏までこの人物なら把握している、と判断したことからだった。

 ゴールドラッシュの発生を機に、自分達も第二の松平家や水野家のようになろう、として北米大陸に赴こうとする国人衆等の動きがあったが、そうした中でも影響が大きかったのが、今川義元の動きだった。

 今川家も、北米大陸開発に積極的に乗り出すことを言い出し、更に武田家や北条家等とも協力して行いたい、と義元は声を挙げた。


 北米で金が大量に採れる、更に土地も肥えているらしい、との情報が日本国内外に流れているところに、義元のこの発言である。

 それこそ、義元殿が一口乗るのなら、我も我もという動きが、日本国内に起こるのは当然だった。


 日本政府上層部にしても、インド洋を方面の攻勢が一段落し、次の国家戦略、軍事戦略をどうすべきか、検討を始めている所に、折よくとも言える北米大陸西海岸での金発見の情報である。

 この際、北米大陸西海岸を本格的に開発して、そこを前進拠点として中南米大陸に遠征を行うのはどうか、という声が日本政府上層部に高まるのは、半ば当然の話だった。


 それに実際問題として、中南米大陸は、皇軍の知識を得たこの時代の日本にしてみれば、垂涎の的としか言えない土地だった。

 まず、言うまでもないことながら、この時代の中南米大陸は、大量の金銀の産地である。

 そこを日本が抑えてしまえば、日本自身も金銀の産出国であることを併せれば、どう少なく見積もっても、この時代の世界の金銀の産出の半分以上を日本が握ることになる。

 更に、皇軍の知識がそのまま正しければ、オーストラリアや南アフリカ等からも金が産出される筈で、これらも日本は抑えていけるだろう。

 そうしたことからすれば、金銀の魅力だけでも、日本にしてみれば、中南米大陸への侵攻作戦発動は極めて理にかなったものといえた。


 それに中南米大陸の特産物も、また、魅力に満ちていた。

 まず、食べ物ならば、ジャガイモやサツマイモ、更にトウモロコシの原産地である。

 皇軍の来訪により、この世界の日本にジャガイモやサツマイモ、トウモロコシがもたらされ、日本国内等では徐々に普及しつつあったが、原産地で原種を調査することで、これらについて、大きく品種改良等が進むことが期待されていた。

 他にも、日本には馴染みが余りないが、キャッサバの原産地でもあり、痩せた土地でも取れるキャッサバは、特に熱帯、亜熱帯地域において、救荒食物として期待される存在だった。


 そして、医療品として、マラリアの特効薬になるキニーネを生み出すアカキナノキの原産地である。

 この世界の日本では、(史実同様に)瘧という名で知られていたマラリアが、完全に土着しているのが現状であり、皇軍がもたらした知識により、予防対策が進みつつあったが、そうはいっても治療薬の確保は焦眉の急と言って良かった。

 また、世界各地に日本が進出しつつある以上、マラリア対策は必要不可欠だった。


 他にもゴムの木等々、中南米原産の特産物は数多い。

 これらを確保して、今後の日本の経済成長、発展に大いに役立てて行こう、と当時の日本政府上層部は考えたのである。

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― 新着の感想 ―
[一言] 中南米原産の特産物は本当に数多いですからね。 ただこの時代にトマトやジャガイモは戦時中のものよりだいぶ毒性が強いはずなのでそのあたり注意しないといけませんけど。
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