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第16章ー11

 実際、日本のかんがいに関する技術知識は、皇軍がもたらした技術知識に、それを日本各地での河川改修等で大きく生かして実践して得たモノを加えることで、当時としては、文字通りに時代が違う代物になっていたのは事実だった。

 だから、日本が主に担うことになったセイロン島のポロンナルワのかんがい設備復興は、そういったことも相まって順調に進むことになったのだ。

 そして、そこで働く日本人の中には(史実の超有名人である)この人もいた。


「よし、これで、かんがい設備はほぼ完成したぞ。後は、日常の定期整備を怠らなければ、それこそ百年は大規模な再整備は不要な筈だ。いい仕事ができた」

 夕餉の場で、木下藤吉郎は、上機嫌で妻のお寧に、半分、軽口を叩いていた。

「良かった。もうすぐ、日本に帰れる」

 お寧はホッとした口調で言った。


 皇軍来訪により、日本から戦乱が無くなったことは、多くの足軽等を一時に失業させることになった。

 勿論、そういった者の中で、帰農する者もいなくはなかったが、足軽等になった者の多くが、半ば口減らしもあって、故郷を離れて足軽等になった者である。

 だから、帰農しようにも帰るべき土地が無いのが、数多と言えた。


 そういった足軽等の失業対策として、皇軍の示唆を受けた新日本政府が行ったのが、日本各地の河川大改修や街道、港湾を整備する土木工事だった。

 尾張、美濃、伊勢においては、濃尾三川の大土木工事が行われたので、尚更、失業した足軽等が職を求めて、大いに集った。

 更に、それだけでは人手が足りないとして、近隣の農家からも次男、三男等が、小遣い稼ぎ等のために濃尾三川の大土木工事に従事した。


 とはいえ、人が集っただけでは、人は動かない。

 例えば、織田信秀は、家臣の林秀貞らを大土木工事の現場指導役、この当時でいえば奉行として派遣することで、この仕事に当たらせている。

 そして、林秀貞は濃尾三川の大土木工事で、見事な成果を挙げた。

 また、若き日の丹羽長秀らも、林秀貞を傍で見習いとして支えた。


 さて、木下藤吉郎だが、父との折り合いが悪かったこともあり、半ば勝手に家出して、最初は濃尾三川の土木工事現場で働くようになった。

 そして、人夫として働く内に、よく働き、頭が回り、周囲との折衝も上手いとして、周囲の人夫らの信望を木下は集めて、人夫の小頭に、更に人夫の頭領になった。

 更に、その時にこの現場には浅野長勝がいた。


 浅野長勝は、最初は織田信秀に弓衆として仕えていたのだが、皇軍来訪により失業し、人夫の頭領に事実上は転身して、濃尾三川の大土木工事に従事していたのだ。

 そして、浅野長勝と木下藤吉郎は、同じ現場の人夫の頭領として仲良くなった。

 更に木下藤吉郎は、長勝の養女お寧に興味を持つようにもなったが。

 この時点では、それこそ何れはいい女になるだろう、立身して結婚出来れば、程度の想いだった。

 何しろ、この時点でお寧は10歳程で、藤吉郎は15歳程だったのだ。


 そして、1552年に濃尾三川の大土木工事が一段落したことから、失業した長勝と藤吉郎は部下と共にセイロン島のポロンナルワのかんがい設備工事の人夫募集に応じて、セイロン島に向かった。

 この時、お寧も養父と共にセイロン島に向かった。

 そして、セイロン島で二人は愛を深めて結婚に至った、とされているが。


 お寧の実の親の杉原家によると、藤吉郎が13歳のお寧に強引に関係を求めた結果、周囲に二人が公然の関係となったので、取繕うために長勝が二人を結婚させたのだということである。

 それに杉原家が怒った為、木下夫妻は、生涯、杉原家の敷居をまたぐことはなかったと伝わる。

 そんな醜聞が杉原家に遺るが、二人は仲の良い夫婦だった。 

 史実では、秀吉とお寧の結婚は1561年が通説のようですが、この小説の都合もあり、歴史が変わったことから、この世界では、1556年に結婚したということでお願いします。

 後、お寧の生年については、諸説がありますが、この世界では1542年説を採っています。


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― 新着の感想 ―
[一言] 木下藤吉郎なら治水とかはうまくやるでしょうしね、うまく使うに限りますね。
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