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第16章ー10

 ともかく、そうした事態にあることから、ポルトガル領インドの最後の拠点と言えるゴアを攻撃している日本陸軍は、実質的には柿崎景家中佐率いる独立歩兵1個大隊に過ぎない、というのが現実というものだった。

 とは言え、日本軍には同盟軍がいて、しかもこれまでのポルトガルとの行きがかりから、日本に対して積極的に惜しみない協力を同盟軍がしてくれる以上、ゴアに対する日本軍の攻撃が、独立歩兵1個大隊で充分である、というのも事実だったし、柿崎中佐や吉川元春中尉もそれを自認していた。


 そうした現状を踏まえ、吉川中尉は柿崎中佐に、少し違う雑談を試みた。

「ところで、セイロン島のポロンナルワの復興の現状は順調に進んでいる、とみて良いのでしょうか」

「順調に進んでいる、と見るべきだろうな。信濃から善光寺の僧侶が無事にたどり着いて、実際に自分達が住む建物や寺院の建立に取り掛かったとのことだ。そして、ポロンナルワのかんがい設備も、ほぼ完成したという話だからな。今後、ポロンナルワに住む住民は増えることになるだろう。全く、真田幸綱中佐は本当にいい仕事をしたと言えるな」

 吉川中尉の意図を、どこまで勘繰っているのか、表面上は上機嫌で柿崎中佐は言った。


 この1556年当時、セイロン島の日本軍の事実上の総司令官は、真田幸綱中佐と言って良かった。

 数年前に行われたポルトガル領セイロンの攻略作戦が、日本(と同盟国)の大勝利で終わった後、日本軍の主力は、セイロン島から引き揚げたが、そうはいっても、日本軍全てをセイロン島から引き揚げる訳には行かず、独立歩兵1個大隊を基幹とする陸軍を、日本はセイロン島に駐留させたのだ。

(後、言うまでもなく、海軍、艦隊も日本はセイロン島に展開させた。

 ポルトガルの通商を妨害し、また、日本の通商を保護するためには、セイロン島に日本海軍、艦隊が展開することが必要不可欠だったからだ)


 そして、その独立歩兵1個大隊を基幹とする日本のセイロン島駐留軍の最高司令官に就任したと言えるのが、真田中佐だった。

 真田中佐は、セイロン島の中でも、コロンボとトリンコマリーの防備を日本軍の主力で固める一方、キャンディ王国やコーッテ王国が共闘して行うシーターワカ王国への攻撃が上手くいくように、便宜を積極的に図った。


 その一方で、インド本土のヒンドゥー教徒に対する影響を真田中佐は考え、ヒンドゥー教を国教とするジャフナ王国と、(上座部)仏教を国教とするキャンディ王国、コーッテ王国が友好関係を築き、続けられるように、様々な交渉、また仲介を行った。

 この交渉や仲介を真田中佐が行う際に役立ったのが、日本が(大乗)仏教が優勢な国家であり、ヒンドゥー教の国家でも、(上座部)仏教の国家でもない、ということだった。

 このために、一方に偏った意見ではない、として双方から真田中佐の意見は虚心坦懐に聞かれることになり、交渉や仲介が上手くいく一助になったのだった。


 それもあって、ポロンナルワの復興と、それに伴う新たな宗教上の聖地化は順調に進んだ。

 更に言えば、真田中佐は、ポロンナルワの復興に際して、主にかんがい設備の復興を優先的に日本が担うことにした。

 これは、日本から送られてくる技術者及び人夫の多くが、日本各地の河川改修等で治水関係に従事して、それに習熟していることが多かったのが一つ。

 また、宗教関係の建築は、できる限りを現地に任せることで、宗教対立から一歩引いた立場を日本が維持できるように配慮した結果だった。

 こうした真田中佐の配慮により、セイロン島における日本の立場は、宗教関係においては安定され、第三勢力として双方から一目置かれるようになったのだ。

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