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第15章ー17

 そんな会話が、上里勝利とマカリエ主教との間で交わされた後、勝利は事のてん末について、日本大使館の主だった者に報告した。

 日本大使館の主だった者の多くが、マカリエ主教を介して、勝利とソコルル・メフメトの間に個人的なつながりができそうなことを歓迎したが。

 その一方で。


「ふむ。ついでに一服、食事に盛りたくなる話ではあるな。セルビア総主教の代理が、オスマン帝国第3位の宰相閣下と実の兄弟とは。この2人の会食の際に、食事に一服盛るのも一興の気が」

 宇喜多直家は、いきなり物騒なことを言った。

「止めて下さい。何てことを考えているのですか」

 勝利は、怒るというよりも、慌てて止めるような口ぶりで諫めた。


「フフッ、それ位、兄弟の会食だから、といって心温まる会食に常になるとは限らないということだ。久しぶりに、また、いつものように、と声をかけた兄弟の会食の席で、兄弟の一方が、相手に対して一服、盛るというのは、それなりに歴史上にあった話だからな」

 直家は、そう勝利にうそぶいた。

 

 ちなみに直家が、コンスタンティノープルの日本大使館に赴任しているのは、史実の直家の活躍を知っていた皇軍関係者の一部が、岩畔使節団に参加していた際の直家の行動を見て、史実通りの有能さを直家は示しそうだ、とスカウトした結果だった。

 直家にしても、うだつの上がらない備前の一部の警察署長(?)をこのままやるよりは、この際、コンスタンティノープルの日本大使館の一員として、一旗揚げよう、とスカウトに応じたのだった。


 勝利は、そのような経緯を全く知らなかったし、また、直家が史実で行ったとされる数々の悪行

(主君の浦上宗景を追放し、更にその際に旗頭にした浦上久松丸を後で毒殺し。

 また、自らの野望の為だけに、義父(妻の父)、妹婿や娘婿といった親族を平然と暗殺し。

 弟の忠家は、「兄の前では、いつ殺されるか、と不安で鎖帷子を常に身に着けていた」と語った程。

 他にも日本史上初とされる鉄砲の狙撃による三村家親の暗殺まで、直家は実行している。

 なお、これらの多くは二次史料に見えるもので、一次資料での裏付けは少ない話といえる。

 それに、史実において、織田と毛利という二大勢力に挟まれた地方の国人衆の判断としては、ある程度は身内の情には流されない非情さがないと生き残れなかったのも事実ではあった)

も知らなかったので、性質の悪い冗談と考えたが。

 もし、史実(?)を知る面々がこれを知ったら、直家らしい、と言ったのは間違いない。

 それはともかく。


「ソコルル・メフメトに、スエズ運河開削をそれとなく勧めないとな。そうしないと、オスマン帝国はスエズ運河を開削しないだろう。そして、スエズ運河が出来れば、日本による欧州侵攻作戦も不可能とは言えなくなるし、経済的にも莫大な利益を生むだろう」

 そう直家は、勝利に言い、勝利もその言葉には肯かざるを得なかった。


 そして、公会議の合間を縫って、ソコルル・メフメトとマカリエ主教という兄弟の会食は、時機を見計らって行われることになった。

 その際の料理を、勝利は作ることになり、懸命に腕を揮うことになったが。


 その際には、兄弟間の会食とはいえ、公会議の最中に行われる会食ということもあり、半ば必然的に「斎」に則った料理が出されることになった。

 従って、精進料理と同様に肉や魚、卵や乳製品、更には酒やオリーブ油等は禁じられることになる。

 考えようによっては、料理人が使える食材が制限されることになり、つらい話になりかねないが、勝利にしてみれば、精進料理は、母から主に伝授された料理法で、むしろ望むところと言えた。

 とはいえ、会食の席を前に勝利は緊張せざるを得なかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] お話としては面白いけど、宇喜多直家というめっちゃ危なっかしい人間をこんな大事な外交場面に使うかなあ… 使うとしても、強力に「抑え」の出来る人間を同行させると思うけど…
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