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第15章ー3

 そして、カトリックと(東方)正教会の合同を進めると共に、その一方で、スペイン、ポルトガルを始めとするカトリック諸国の本国、及び植民地における奴隷制度を廃止に追い込むことで、南北米大陸及び、その周辺(具体的に言えば、カリブ海諸島)の植民地化を阻止してしまおう、という大計が、日本政府上層部で立案されることになったのである。

(なお、その内容の具体化については、岩畔豪雄や辻政信といった皇軍上層部、特に陸軍関係者が積極的に動き回った末による、と後世に伝わっている)


 とはいえ、それを実現するとなると、よく言えば遠大、悪く言えば迂遠といえる方策を、日本は講じざるを得なかった。

 そして、その出先機関として事実上は主に活動したのが、オスマン帝国の首都コンスタンティノープルに置かれた日本大使館であり、また、インド株式会社のコンスタンティノープル支店になる。

 更に、そのための人材も何人か、別途、日本から送り込まれていた。


「南無妙法蓮華経」

 宇喜多直家は、法華宗徒として、題目を唱えた。

 だが、気持ち声を控えざるを得なかった。

 それこそ、コンスタンティノープルにいる自分の周囲は異教徒ばかりで、仏教徒は、ほぼ日本人のみという極少数派であり、更に法華宗徒となると、その一部となってしまう。

 元々、直家自身が熱心な法華宗徒でないこともあって、尚更、声が小さくなりがちだった。

 それでも、コンスタンティノープルにいる日本人の中では、まだ、宇喜多直家は、自分は異教徒、仏教徒であると明言し、行動している方だった。


「よくもまあ、題目が唱えられますね」

「上里勝利殿こそ、きちんと念仏を唱えられるべきでしょう。実母の永賢尼殿が嘆かれますぞ。というか、義弟の本願寺顕如殿から、それが義兄上の振舞いですか、と叱責されるのではないですかな」

「分かってはおりますが、イスラム教徒やキリスト教徒が、ここでは多数派です。念仏を唱えるのがどうにも躊躇われてなりません」

 日本大使館を訪問した勝利が、直家とそのような会話を交わしていると。


 その会話が聞こえた土御門有脩や勘解由小路存昌も、その会話を聞きつけ、

「確かにな。勅命だから、ここに来ておるが、どうにも肩身が狭い」

「自分も、イスラム教なり、キリスト教なりに改宗したい、と想ってしまう」

 有脩や存昌が口を挟んで言った。


 土御門家も勘解由小路家も、陰陽寮の重鎮と言える安倍家や賀茂家の嫡流を称する家である。

 そのために、暦となると陰陽寮の者が最も詳しく、また、第三者への説得も容易であろう、という日本政府の判断から、改暦について、(東方)正教会の幹部にその必要性を訴えるのには、必須の人材であるとして、二人はコンスタンティノープルまで来ることになり、実際に赴任したのだが。


 実際に、コンスタンティノープルに赴任して以降の二人の言動は、上記と大差のない言動を繰り返している有様で、日本大使館内からも、

「あの二人に任せておいては、(東方)正教会の改暦等、進む筈がない」

 と酷評されている有様だった。


 直家のみならず、勝利でさえ、(儀礼上から内心に止めはしたが)深く溜息を吐きはしたが、それでもいうべきことは言わざるを得ない。

「ここでは仏教徒、神道の信徒としては肩身が狭いのは分かりますが、やるべきことはやって下さい。正しい暦を採用すべき、そして、その暦の正しさを説くために、あなた方は日本から来たのです」

 直家は、そう二人を諫めた。


 有脩や存昌はその諫言を聞いて、少し肩を落としはした。

 だが、余り響いているようには見えない。

 直家と勝利は、やれることをやるしかなかった。

「それでは、コンスタンティノープル総主教に会ってきます」

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