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プロローグー2

 さて、その三条美子の夫、平手久秀の元の主だが。

 頭を抱え込んでいた。

「真冬に氷を売り物にして、氷を売って儲けるのが、真の商人だと。義父は無理を言う。確かに、そこまでの難題ではないが、これも中々の難題だ」

 三条美子の夫、織田信長は首を唸っていた。


 信長にしてみれば、一躍、出世する手段として手っ取り早い、と美子は目を付けた女人だった。

 何しろ、養女とはいえど、インド株式会社の代表取締役の1人、上里松一の娘なのだ。

 更に実母を介して本願寺ともつながりがあり、清華家の三条家の猶子扱いされたことから、貴族社会とも縁があることになる

 これ程の女人が他にいるとは思えず、信長は美子に求婚したのだ。


 そして、実は美子もこの結婚に乗り気だったらしく、トントン拍子にこの結婚はまとまった。

(この結婚を調えるのに奔走した平手政秀にしてみれば、却って悪夢を見る想いがしたらしい。

 そのために政秀は、この結婚式がほぼ終わり次第、出家遁世してしまった)


 結婚してみると、信長にとって、美子は悪い女人ではなかった。

 むしろ、家庭的な賢女といえるだろう。

 だが、底が見えない。

 笑顔を浮かべていて、目が笑っているように見えても、目の底の奥までは読めないのだ。

 更に言えば、賢すぎると見えなくも無かった。


 信長自身が、オスマン帝国への使節団の一員だったので、知っていることだが。

 美子は、オスマン帝国の皇帝の大奥の中に、女奴隷として飛び込み、平然と生還したという。

 それこそ、伊賀甲賀を始めとする日本の女忍びでさえ、そんな芸当ができる女忍びがいるとは思えないのだが、美子はそれをやり遂げてしまったのだ。

 更に4か国語に通じた上で、妊娠出産育児に追われながらも、2か国語を学ぼうとしている。

 また、美子はスンニ派のイスラム教徒に完全に成り済ませることもできるのだ。

 これは、危険な女と結婚したかも、と信長自身が内心で少なからず後悔する有様だった。


 そして、美子の養父、上里松一も公私混同はしない人間だった。

 信長に、シャムから輸入する米を、北米大陸の日本植民地等に売り込む任務を与えたのだ。

 だが、これは多くの担当者が途中で投げ出した曰く付きの任務だった。

 日本の米とシャムの米は違う以上、シャムから輸入する米が、日本植民地で好感を持って受け入れられる訳が無かった。

 安いだけの不味い米だ、という評判がすぐに立ってしまい、不良在庫の山が出来たのだ。


 これに激怒したのが松一で、義理の息子の信長に、不良在庫の処理をしろ、と言ったのである。

「お前ならできる。できたら、それなりのことをするぞ」

 と義父は、信長に命じたが。

 信長にしてみれば、義父は無理を言うなあ、と命じられた当初は想った任務だった。

 それでも、信長が断らなかったのは。


 オスマン帝国への往復航海で、それなりに修行しており、尾張時代のような我が儘が最早、通じないと言うのが分かっていたことと。

 また、美子がそれを聞いて、

「シャムの米が不味いことはありません。料理法を工夫し、それを合わせて売り込むのです。シンガポールでのことをお忘れですか」

 と信長に思い出させたことだった。


 かつて、シンガポールで、美子はシャムの米の料理法を教示し、使節団に食べさせたのだ。

 そして、それを食べた信長を含む使節団の面々は、シャムの米の味に驚嘆したのだ。

 信長はそれを想い起こした。

「ふん。妻にできて、ワシができない、というのでは、ワシが廃るわ」

 妻の美子の激励に気を取り直して、信長は、そう呟くと共に気を取り直したが。

 頭の片隅で想った。

 こんな調子で、妻にずっと操縦されそうな気がする。


 ともかく、気を取り直した信長は、米をどうすべきか、考え込んでいた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 再開おめでとうございます。 尻に敷かれる織田信長、てなかなか新鮮ですね。 このまま、織田財閥が誕生するかな? 子沢山の人なので、三井家みたいに同じ世代の子孫同士で争うのも良いですね。
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