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第14章ー1 北米大陸への移民の始まり

 新章の始まりです。

 水野信元は、妹が気の毒でならなかった。

 国人という小なりとはいえ、領主の娘であり、また、松平広忠という領主の正室だったのだ。

 それなのに、まさか異国、海の彼方の大地の開拓民の一人になるとは。

 もっとも、自分も開拓民の一人となった以上、自分も同様と言える。

 ただ、自分からすれば義弟になる松平広忠まで、開拓の際の様々な苦労から若死にしたのは、妹にとって、余りにも気の毒な話だった。


 日本にいれば、夫の菩提を弔って、云々という話になるのかもしれないが。

 この開拓地では、日本人の女性、それも子どもを産める女性は、貴重な存在だ。

 信元自身も勧めたが、妹は久松俊勝と再婚して、子を生している。


 なお、松平広忠との間の息子は、まだ幼かったこともあり、この開拓地に妹夫婦が赴く際には、日本に残さざるを得なかった。

 広忠の父方伯母(松平清康の姉)、久がその息子を預かった。

 その息子が小学校を卒業次第、この開拓地、北米大陸という土地の西海岸に赴くことになっていたのだが、実父が亡くなり、実母が再婚したことから、実父の遺した土地の所有が問題となった。


 何しろ開拓地だ、土地の境界等、幾らでも揉める要因が山程ある。

 義弟は領主だったこともあり、領民を小作人として連れて来てもいたので、それなりどころではない土地、農地の地主でもあった。

 久松俊勝は、自分の目もあり、表向きは松平広忠殿の遺産の農地は息子のモノという態度を執っている。

 だが、こういう場合、親族間で遺産の土地が、いつか分け取りされ、息子が行ってみたら、土地が無くなっていたという話は、十二分にありうる話だ。

 そうしたことから、まだ小学校を卒業していない息子は、急きょ、開拓地へと呼ばれることになった。


 とはいえ、文書のやり取りにも日本と北米大陸では、当時は時間がかかる話になるのは当たり前で、更に移民船に、その息子が乗り込む必要もある。

 結果的に松平広忠の息子が、北米大陸の大地を踏むのは、実父が死んで2年程も経ってからのことになってしまった。

 水野信元としては、妹とその息子(自分にしてみれば甥)が気の毒でならなかった。


 さて、何で松平広忠や水野信元らが、北米大陸へ移住したかというと。

 皇軍の難癖が、そもそもの発端だった。

 もっとも、全くの難癖か、と言われると、松平広忠や水野信元にしても難癖とは言いにくかった。

 皇軍来訪当時の三河では、尾張の織田氏と駿河の今川氏という二大勢力に挟まれる一方で、三河内部も主に西三河では松平氏の同族間の内紛があり、東三河では吉良氏が同族同士が相争うという有様だった。


 この現状から、皇軍が介入して、松平広忠らが三河の混乱の原因であるとして、松平広忠とその義兄になる水野信元に、三河(及び尾張)から出て行くように命じてきた。

 松平広忠は水野信元と、今後の身の振り方について相談した。

(なお、実際に松平広忠らに、三河追放の沙汰が正式に決まったのは、皇軍が上洛を果たした後、2年程が経ってからのことになる。

 それだけ、一応は丁寧に各勢力に対して、事情聴取等が行われたのだ。

 だから、武門の面子を賭けて云々という暴発が起きなかったと言える)


「この際、日本から出て行こう、と思います」

 松平広忠は、義兄にそう言った。

「日本からか」

 水野信元は、この最初の相談の時、実は消極的な意見だった。

 だが、義弟の言葉を聞く内に、自らも賛同することになった。


「三河から出たとして、国内で我々が自活できると思いますか」

「確かに」

「それよりも新天地を目指すべき。皇軍と申す者によれば、東の果てに大陸があると聞きます。そこで、自らの運命を切り開くと言うのはどうでしょう」

 広忠は義兄に熱弁を振るった。

 ネット情報を見る限り、久姫については、松平清康の妹と言うのが通説のようですが、久姫の子どもの年齢等から考えると、私としては姉と考えざるを得ません。

 そのために松平広忠の伯母と久姫を表記しています。


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― 新着の感想 ―
[一言] 竹千代の運命も皇軍に捻じ曲げられましたが、幼少期の不幸は変わりませんな。
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