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第13章ー33

 さて、コロンボの城塞を巡る日本軍とポルトガル軍との攻防戦から、少し時と場所を遡ることになる。


 そんな有様を呈しながら、コロンボの城塞に対する攻囲作戦が、1552年の8月から9月に掛けて、日本軍によって展開される一方で、キャンディ王国内に残された真田幸綱少佐は、段列(補給)部隊の指揮を部下に任せて、自らはキャンディ王国軍に銃剣付き火縄銃を用いた戦術等の指導を試みていた。

 勿論、段列(補給)部隊の重要性を、真田少佐が知らない訳ではない。

 だが、キャンディ王国の協力、及び日本軍が物資の高価買取を図ったことにより、補給物資の調達は真田少佐が部下の矢沢頼綱大尉らに任せても、そう問題が起こらない有様になっていたのだ。


 だから、真田少佐は、キャンディ王国軍の指導を積極的に図ることにしたのだ。

 それによって、親日的なキャンディ王国を優位とするセイロン島支配を確立しようとする、日本の国家戦略行動の一環と言える行動だった。


 なお、これまで、キャンディ王国の軍隊が、全く銃を知らなかったわけではない。

 ポルトガル軍と同盟したり、また、交戦したりしたことがある以上、銃をキャンディ王国軍は知っており、また、少数とは言え保有もしていた。

 だが、火縄銃に銃剣を付け、積極的に白兵戦を挑むことも可能である、そして、歩兵全員をほぼ銃兵として、更にそれを活かした戦術もあると言うのは、日本軍によってキャンディ王国軍に本格的にもたらされることになった。


 キャンディ王国の軍人も、それなりにポルトガルを始めとする対外戦争には慣れ親しんでいる。

 だから、真田少佐の指導が合理的であることを理解すれば、その指導を受け入れることに、そんなに大きな抵抗は無かった。

 いや、真田少佐の指導に驚嘆して、むしろ積極的に受け入れようとする有様だった。

 かくして、一月余りの指導の結果。


「真田家の家紋が6文銭なのは、このためと言われても信じられるな」

「ええ、三途の川の渡し賃ということらしいですな」

「真田少佐の指導の下、素晴らしい練度に達したようですね」

 呉越同舟という言葉があるが、関東の戦野で長年に渡り、因縁によって戦い抜いた北条綱成少佐、太田資正大尉、水谷正村中尉が揃って褒める光景と言うのは、何とも言えない光景ではある。


 その3人の眼下では、真田少佐の指導によって鍛え上げられたキャンディ王国軍の兵士が、実戦さながらの模擬戦を繰り広げている。

 勿論、空砲を放ち、模擬刀を付けての模擬戦に過ぎないが、それでも見る人が見れば、この模擬戦を行っている将兵の練度が極めて高いことが分かる代物だ。


「ところで、三途の川の渡し賃云々と言うが、実はセイロン島の仏教では、三途の川の概念自体が無い、と言うのを聞いたか」

「噂として聞いたのですが、本当なのですか」

「本当らしいですよ」

 上記の3人は、6文銭の会話を交わしたことから、仏教について更に突っ込んだ会話を始めた。


「真田少佐が、6文銭は三途の川の渡し賃だ、と言ったら、三途の川自体が通じずに、呆然としたとか」

「衝撃を受けるのも無理ないな。同じ仏教徒なのに通じなくては」

「仏教と言っても、大乗と上座部ということで違うとは聞いていましたが、三途の川も違うとは」

 3人は更に話を推し進めた。


「セイロン島の仏教を誰かが勉強しに、日本から来るべきかもしれませんな」

「いや、世界中の仏教徒が集まれる場所、聖地をセイロン島に作るべきでは。それこそキリスト教徒やイスラム教徒が集まるエルサレムのような場所を」

 3人は話をさらに深めていった。


 この会話が発端となって、セイロン島の古都ポロンナルワが再建されることになるのだが、それは少し先の話になる。

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