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第2章ー10

 当時の東南アジア情勢の説明話になります。

 というか、ここまで当時、東南アジアが戦乱状態に陥っていたとは、歴史に無知で私は知りませんでした。

「そういえば、安南やシャム等の情勢はどうなのでしょう。ブルネイに小王国があるとは聞きましたが」

 欧州情勢については、更なる情報収集が必要だが、今のところは、まだまだ先の話だ。

 むしろ、足許と言える東南アジアの情勢を把握しておこう。

 上里松一少尉は、張敬修に確認することにした。


「安南(ベトナム)は、酷い内戦状態です。黎朝が安南国の皇帝となって統治していたのですが、10年余り前に権臣の莫氏が黎朝を滅ぼし、莫朝を作りました。ですが、黎朝の遺民は、鄭氏と阮氏が中心になって、黎朝復興を旗印にして、莫朝に対する内戦を挑んでいます。莫朝はそれに苦慮し、明に対する従属を決断したとか。もっとも、これはこれで、反明感情の強い安南国の民の民心を莫朝から引き離してしまい、更に莫朝を追い込んでいます」

「そんな酷い状態なのですか」

 上里少尉は、目を見張る思いがした。

 自分のいた世界では、仏印の一角になっていたところが、そんな有様とは思わなかった。


「かつて、クメール王国があったところは、今や安南とシャムの角逐の場となり、小規模な現地勢力が寄らば大樹の陰、という有様のようです。ですが、私どもの商売で、直に行くことはなく、安南やシャムからの間接的な話なので、実態は違うかも」

 張敬修は、安南から海岸沿いに義理の息子(?)に情勢を説明するつもりらしく、次にカンボジアに関して説明してくれた。

 上里少尉の、これにも唸らざるを得なかった。


 内陸部に関する情報もできたら欲しいが、義父(?)にしても、商売に直接、関係がないところの情報までも把握しようとはしていないだろう。

 それこそ、それなりの情報料をこちらから払わないと、張敬修といえど、情報を集めようとしない可能性すらあり得る。

 だから、海岸部に情報が限られるのは止むを得ないが、これは色々と大変そうだ。


「シャム(タイ)王国にしても、旧クメール王国領に手を出してはいるとはいえ、一種の予防戦争という側面が大きいようで、南にも西にも敵を抱え込んでいます。何しろ、シャム王国に半ば従属していたマラッカ王国は30年程前に、ポルトガルの攻撃の前に滅び、その王族がジョホール王国を建国し、マラッカ奪還をずっと図っている有様ですからね。こうしたことから、シャム王国の南部は、この紛争のいわゆる火の粉が飛んでくることが絶えず、落ち着かない有様らしいです。西部は西部で、ビルマのタウングー朝がポルトガル人の鉄砲を装備した傭兵を数百人規模で雇い入れており、シャム王国自身も、自衛のためにポルトガル人の鉄砲を装備した傭兵を同様に雇い入れる有様で、紛争が起きているらしいです」

 シャム王国について、張敬修は少し長めの丁寧な説明をした。 


 上里少尉が、何故に張敬修がそこまでの情報を知っているのか、と考えていると、張娃が口を挟んだ。

「実は父にとって、シャムの米は、明等に対して送る大事な貿易品の一つなのです。そうしたことから、情報を集めているのです」

 その言葉に上里少尉は納得できるものを覚えた。

 成程、そういうことなら、シャムの情勢に詳しいのも納得できる。


「娘の言うのも一つの理由ではあるのですが、他にも理由があります。シャム王国の立地とその勢力です。何しろ明から印度の間にある国、勢力の中では、最大の勢力で、位置的にも中間にあると言ってよい。この国が安定せずに、揉めていては、色々と商売上で気を使わないといけないのですよ」

 張敬修は、更に一言を付け加えた。

 確かに、この言葉にも上里少尉は肯けた。


 現在、マラッカ海峡の波は高く、荒れているようだな。

 こうした場合、陸の交易路を取らないといけないが、陸路も安全でないようだな。

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― 新着の感想 ―
[一言] この頃に日本人傭兵が歓迎されたのも東南アジアだけでなくインドやスリランカもめちゃ荒れていたからと言うのもあるのですよね。 日本の刀剣や槍、後には火縄銃が性能的に優れていたというのもあったよ…
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