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第13章ー27

 日本陸軍のコロンボ近郊への上陸作戦完了は、ポルトガル軍、コーッテ王国軍、それぞれに激震を奔らせる事態と言えた。

 ゴールが陥落したことから、コロンボに日本陸軍が攻撃を仕掛けてくると、両国軍の首脳部は共に思ってはいたが、余りにも早すぎる上陸作戦の完了だった。

 もっとも、それが日本陸軍が約二千という少数精鋭だからこそ為された業だというのも、見る人が見れば分かる話ではあったが。

 とはいえ。


 日本陸軍は野戦用として大砲8門を装備していた。

 日本陸軍というか、皇軍の目からすれば、76ミリ口径の山砲に過ぎなかったが、当時のポルトガル軍にしてみれば、野戦に際して、容易に移動して使用できる大砲等、いわゆる野砲は、夢の産物に等しい代物で、いわゆる野砲をコロンボにいるポルトガル陸軍どころか、インド本土でも保有していなかった。

 更に、日本陸軍は、全員がいわゆる銃兵となっているのも判明した。

 これは、特にコーッテ王国軍に、大いなる脅威として見えてならなかった。


 こうしたことから、コーッテ王国軍首脳部は、緊急会議を開いて、日本軍への対処を話し合った。

「どうする」

「とりあえず、ポルトガルに対して、戦うつもりはあった、ということを示す必要がある。戦いもせずに、日本軍との共闘を図っては、日本軍の印象も悪くなるだろうしな」

「ということは」

「我々が最大限に動員すれば、約1万の兵を集めることが可能だ。その内の半数、約5千を日本軍に向けるというのはどうだろう」

「ふむ。少し多い気がするが」

「そう多いというのが、実はカギだ。5千の軍勢、日本軍の2倍以上を集めたが、日本軍の質の前にあっという間に我々は潰走した、という結果を、ポルトガル軍と日本軍に見せつけるのだ」

「成程」


 ここに至り、コーッテ王国軍首脳部は、緊急会議の席で、お互いに笑いを浮かべて、話し合い出した。

「要するに我々は弱兵なので、あっという間に負けました、という訳か」

「そう、あっという間に負けたので、実際の損害はそう出ない」

「そして、大敗したので、日本軍に講和、場合によっては降伏を我々は申し出ると」

「ポルトガル軍が怒って、難癖を付けて来たら、それなら、日本軍に勝って下さい、我々の力ではどうにもなりません、と頭を下げる訳だな」

「日本軍にしても、5千もの兵を我々が集めてぶつけるのを見たら、講和を受け入れる気になると」

「いや、これは神算鬼謀の名作戦だ」

「それでいくことにするか」


 かくして、日本軍にしてみれば、酷い八百長戦が始まることになったが。

 そんなことを全く知らない最前線の日本陸軍の将兵にしてみれば、何ともあっけにとられる会戦の結果となってしまった。

 5千の兵を集めるとなると、すぐにすぐは、幾らコーッテ王国軍といえども集められない。

 そのために8月10日頃になって、コーッテ王国軍は日本陸軍への攻撃を策したが。


「敵軍の数に呑まれるな。我々は数は少なくとも、武器等に勝っているのだ」

 上杉景虎少尉は、コーッテ王国軍との激突前に、そう部下を鼓舞した。

 とはいえ、ざっと見る限り、敵軍の数は倍以上だ。

 どう見ても苦戦は必至と覚悟を固めざるを得なかったが。


 近づいてくるコーッテ王国軍に、日本陸軍が砲撃を数発程も、浴びせた瞬間に、コーッテ王国軍は潰走を始めてしまった。

「彼らは何をしに来たのだ」

 上杉少尉は、あっけに取られてしまった。

 それと同じような想いを、戸次鑑連中佐以下、この場にいる日本陸軍の将兵全てがすることになった。


 そして。

「日本軍には勝てませんので、まずは停戦の申し入れを」

「ああ、分かった」

 戸次中佐は、怒るというよりも呆れ返って、コーッテ王国からの停戦申し入れを受け入れた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 実際相手と打ち合わせなしに偽装撤退からの停戦申し込みとか怖すぎて神算鬼謀感ある
[良い点] 勝ち目がないけど1回当たってからさくっと降伏するの、戦国時代っぽいですね。 皇軍から近代戦の知識を叩き込まれる前だったら、たぶんみんな納得していたんでしょうけど、流石に日本で近代火力戦が始…
[一言] そもそも榴弾砲などのない前装式の大砲時代だと大砲を人に向けてうっても大きな球が転がるだけなので殺傷できる人数も大したことないし、その割には火薬や砲弾の装填に30分かかったりしますし、火薬など…
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