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第13章ー21

 そんな風にトリンコマリー近郊に急きょ設けられた駐屯地で、セイロン島に上陸してきた日本軍は、1月余りに及ぶ船上生活でなまった体等を鍛え直したのだが。

 10日程掛けて鍛え直しを日本軍がほぼ済ませた頃合いに、キャンディ王国の首都に向かった鬼庭良直中佐らは、キャンディ王国との同盟交渉に成功して駐屯地に帰還してきた。

 留守部隊を率いていた戸次鑑連中佐と、キャンディ王国の首都から戻ってきた鬼庭中佐ら、併せて4人は、早速、お互いの現状認識等をすり合わせる会議を開いた。


「キャンディ王国は日本との同盟締結に応じてくれました。更に我々の提言の多くも、キャンディ王国上層部に受け入れられました。少なくとも、セイロン島における対ポルトガル戦が終結、又は一段落するまでは、キャンディ王国と日本との同盟関係は維持できると思われます」

 鬼庭中佐は、戸次中佐に報告し、他の2人、北条綱成少佐や真田幸綱少佐も、その言葉に同意した。


 戸次中佐は、その言葉を聞いて顔を綻ばせ、部隊の現状を伝えた。

「トリンコマリー近郊に設けられた駐屯地で、部隊の鍛え直しは順調に進んでいる。何だったら、すぐにでも実戦投入が可能だろう。自分はそう考えている」

 戸次中佐が言うのなら、まず間違いない。

 他の3人は、そう考えると共に、いよいよ対ポルトガルの実戦が始まるという緊張を覚えた。


「ところで、対ポルトガル戦争は良いとして、どのように我々は行動すべきだ、と考える」

 実際の戦歴等から、この場、セイロン島にいる日本陸軍内での最上位の指揮官は、戸次中佐という暗黙の了解が、この場にいる4人の間にはある。

 戸次中佐が、上記のように問いかけたことは、改めて他の3人に具体的な戦略、作戦を述べさせた。


「まず、北条少佐率いる独立歩兵大隊1個と、私、真田少佐が率いる段列(補給)部隊の主力は、キャンディ王国内に駐屯することにします。独立歩兵大隊1個は、キャンディ王国の首都近郊に展開し、ジャフナ王国に対して同盟を呼びかける無言の圧力を加えると共に、シーターワカ王国を襲うのではないか、という脅威を与えることになります」

 まず、真田少佐が、当面の作戦を順序だてて述べ出した。


「私の率いる段列(補給)部隊は、トリンコマリー近郊に展開、補給物資の現地調達に当たります。その一方で、戸次中佐と鬼庭中佐が率いる各独立歩兵大隊、合計2個は、セイロン島の南部を迂回、ポルトガルの最大の拠点、コロンボを急襲し、速やかに陥落させることを目指すのはどうでしょうか」

 真田少佐は、その言葉で一旦、作戦案を締めくくった。


 だが、戸次中佐は、その案に早速、疑問を呈した。

「悪くはないように思われるが、インド本土にいるポルトガル軍と、セイロン島にいるポルトガル軍の連絡を断つという観点からすれば、セイロン島の北部を、我々が迂回した方が、より良いのではないか」

「その考えはごもっとも。ジャフナ王国に無言の圧力を加えるという観点からも、そちらの案に、私も賛同したいところです」

 北条少佐は、戸次中佐の顔を、まずは立てた。

 だが、続けての言葉は、戸次中佐さえも唸らざるを得なかった。


「セイロン島の北部を迂回するということは、インド本土とセイロン島の間の(ポーク)海峡を通らざるを得ませんが、その海峡の水深は極めて浅く、所によっては、潮の干満も相まって1メートル程のところも稀ではないとか。地理不案内な我々が、海峡を無理に通航しようとしては、輸送船団の座礁の危険が極めて高いと思料されます」

 北条少佐は、そのように冷静に指摘したのだ。


「成程な。それなら南部を迂回するしかないな」

 戸次中佐は、渋々だが同意せざるを得なかった。 

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