第13章ー19
このように、最初の1日目の協議が終わった後、鬼庭良直中佐以下3人は、今後の方針等について、詳しく3人で話し合った後で、キャンディ王国との翌朝の協議に臨むことになった。
その際に、3人共に微妙に歯がゆい思いがしてならなかったが、それがこの場にいる3人ができる精一杯と言うのも現実というものだった。
例えば、日本製の銃剣付きの火縄銃をキャンディ王国に対して大量に売ること、それ一つについても、この3人の一存で自由に思うような数を売れる訳ではない。
日本製の火縄銃については、それこそ倭寇相手にも売られている代物であり、キャンディ王国からの要望があった、と3人から上申書を付けて、日本政府に要請すればキャンディ王国に売られる代物ではあるが。
この場にいる3人の独断で、キャンディ王国に売って良い代物で無いのは確かだった。
更に売られる数量等についても、日本政府がそれなりに検討することになるだろう。
日本とキャンディ王国が同盟を締結したからといって、日本からキャンディ王国に、無制限に武器が売却される訳が無い。
万が一ということを考えて、それなりの配慮がなされながら、武器が売却されるのが当然だった。
(更に言えば、この場にいる3人共に、日本の戦国時代の自らの経験もあって、日本とキャンディ王国が、お互いに裏切り合う可能性を考えておくことに違和感が無い身の上だった)
例えば、真田幸綱少佐にしてみれば、もし、皇軍の到来が無ければになるが、旧領の小県郡への復帰が叶うのならば、自らを攻撃した武田家への恨みを水に流した末の臣従すら決断しただろう。
かつて、武田家は諏訪家や村上家と共に、小県郡に侵攻してきており、そういった観点からすれば敵ということにはなるが。
だが、旧領復帰のために自らが頼った山内上杉家は、後北条家との戦いを優先しており、自らの旧領復帰に余り協力する姿勢が無かったからだ。
こうした場合に、自らの利益を優先して、武田家に寝返ること等、真田家のようないわゆる国人領主にしてみれば、当然の話だった。
だから、キャンディ王国に対する考えについても、自分達の考えを合わせ鏡のように考えて、対処するのが、この場にいる3人にしてみれば当然の考えだったのだ。
現時点では、ポルトガルという共通の敵がいる以上、日本とキャンディ王国が同盟を締結して共闘するのが当然ではある。
だが、ポルトガルが、セイロン島から排除された後は?
また、セイロン島から排除される前に、戦況に鑑みてポルトガルが、日本が提示する条件よりも好条件を提示して、キャンディ王国との同盟を画策したら?
そう言った場合にまで、キャンディ王国が日本との同盟を無邪気に締結し続けてくれる、と考える程、この場にいる3人は、うぶでは無かったのだ。
もっとも。
少なくとも、翌朝から再開されたキャンディ王国上層部との会議においては、キャンディ王国は、日本に対する好意を示し続けてくれた。
やはり、ポルトガルがキャンディ王国との同盟を一方的に破棄し、コーッテ王国と同盟したという経緯があるからだろう、と真田少佐他の3人共に考える程だった。
そして。
キャンディ王国は、その日の日没まで掛かった長時間の会議の結果、日本側の3人の提案に同意した。
セイロン島全体の内、コロンボを日本が領有することを認めて、トリンコマリーを日本が使用することを認めてくれたのだ。
更にその代償として、日本側からの武器の提供や軍事、行政指導を行いたい、との申し入れも好意的に対応するとの態度を、キャンディ王国上層部は示してくれた。
ここに、現場レベルでのキャンディ王国と日本との同盟は成立した。
問題は、この後のことになる。
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