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第13章ー8

 そうした人間関係のしがらみがある一方で、そういったことに無頓着でいる面々もいる。

 戸次鑑連中佐が率いる独立歩兵大隊の下に集っている部下達は、そういったことに無頓着な、一昔前で言えば猛将揃いだった。


「よろしく願います」

 柴田勝家大尉は、初対面の際に、戸次中佐に髭面を晒しながら頭を下げていた。

「また、戸次殿の下で戦えるようになるとは、心からの本望です」

 旧臣であった由布惟信中尉が朗らかに言っていた。

「まさか大友家の名将として、若年で名を轟かせていた戸次中佐の下で初陣を飾れるとは。父の毛利元就が聞いて、さぞ驚いているでしょう」

 吉川元春少尉も、戸次中佐に対して過去のことに無頓着に言った。


 吉川家は元々は安芸の国人であり、一時は尼子氏方の有力な国人だった。

 しかし、大内方に寝返り、大内義隆の月山富田城攻めに参画している際に、皇軍の来訪があった。

 そのために月山富田城攻めを、大内義隆は止めたのだが。

 その時の吉川家の当主、興経は、その際に素直に従わず、更に大内氏にその責めを負わせるような主張をし、それが通らないと見ると、尼子氏にその責めを負わせようとした。

(もっとも、その裏では毛利元就が暗躍したらしいが)


 そして、他にも理由があったが、こうしたことから、大内氏は防長2国に押し込めとなり、尼子氏は雲伯2国に押し込めとなった。

 だが、このことで吉川興経に対する怨嗟が、吉川家内外から起こり、吉川興経は強制的に隠居させられ、血縁関係から毛利元就の次男、元春が興経の養子となって、吉川家を継いだのだ。

(なお、隠居後程なくして、興経は病死したが、真実がどこにあるのかは言うまでもない)


 だが、戸次中佐の見るところ、吉川元春は、二人の父、実父や養父に似ない、純然たる武人の趣がある好人物だった。

 そう言った点で、戸次中佐は吉川元春に好感を覚えていた。

 もっとも武人の趣があり、義のためならば、悦んで命まで捨てるというそれ以上の人物がいることが、吉川元春の好感度を、戸次中佐の中で相対的に押し下げていた。


「上杉景虎と申します。どうか、よろしくお願いします」

 陰では越後国内の様々な対立の煩わしさから逃れるためだけに、国司代の地位を捨ててまで、自ら陸軍士官に志願したという噂がある一方で、朝廷に対する尊崇の余り、また、義を貫くためには陸軍士官になるのが相当だとして、越後の国司代の地位を敢えてなげうったという噂もある人物ではある。

 だが、上杉景虎少尉が、戸次中佐の下で、シンガポール赴任の際の最初の挨拶をした際の挙措の美しさについては、戸次中佐でさえ瞠目せざるを得なかった。


 実際、戸次中佐が上杉少尉と面談する限り、上杉少尉は朝廷を尊崇し、義を貫きたいという想いから、陸軍士官の途を選んだようにしか思えなかった。

 ここまでの武人がいるとは。

 数々の武将、軍人と会ってきた戸次中佐にしても、上杉少尉程の純粋な想いを持つ武人に逢ったことはなく、そうしたことから上杉少尉を高く評価していた。

 そして、また、上杉少尉と話した事のある軍人たちの評価も同様だった。


 そんな感じで、戸次中佐の下には、軍人と言うよりも武人が集っていた。

 

 そして、真田幸綱少佐が中心になってたてられたセイロン島侵攻作戦に話を戻すと。

 日本陸軍の侵攻部隊は、独立歩兵大隊3個及び段列(補給)部隊で編制されることになった。

 戸次鑑連中佐、鬼庭良直中佐、北条綱成少佐が、それぞれの独立歩兵大隊長であり、段列(補給)部隊は真田少佐が率いることになった。

 更にキャンディ王国と同盟を結んで、後方の愁いを減らす予定だったが。

 侵攻作戦の部隊の輸送だけでも、頭の痛い話になるのは止むを得ない話だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] どえらいオールスターやな 立花道雪、上杉謙信、吉川元春って
[一言] 上杉謙信登場! ただ衆が主力の近代戦でも同じ強さを持てるかどうかはちと微妙な気もしますね。
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