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第90章―14

 そんなやり取りが、北米共和国やローマ帝国で行われている一方で、日本政府最上層部でも、ある意味では似たようなやり取りが行われることになった。


「表立っては言えないとはいえ、実の孫が何れは今上陛下になる気分はどうだ」

「何とも言いにくいことを言われますね」

 伊達政宗首相と広橋愛は、月面等から流れる「君が代」を聞きながら、そんなやり取りをした。


 広橋愛は想った。

 義妹にして実の娘の美子が産まれた直後、養母の理子母さんに言われた。

「何れは人類は月に降り立つことができる」

 その際に、そんなことはできる筈が無い、と自分は考えたのに、本当に自分の孫が産まれるのとほぼ同時に、人類は月面に到達することが出来るとは。


「それにしても、頭が痛い。まさか中宮陛下が五つ子を産むとはな。どうのこうの言っても、双子以上の出産を畜生腹等と呼んで、忌み嫌う人は少なくないのに。そういった声を押し潰すように動かざるを得ないことになるとは」

 伊達首相は愚痴った。


 実際に伊達首相自身が、九条幸家内大臣を介して、美子中宮陛下が五つ子を産むらしい、と今上陛下から聞かされた際に絶句して、これは忌むべきことではないか、という想いが頭の中で過ぎった程だ。

 だが、これを「畜生腹」等と誹謗するのは、不敬にも程がある、との今上陛下の意向を示されては、真に仰る通りでございますとして、動かざるを得ないのが、現実というモノだった。


「仕方ないでしょう。今上陛下の仰せは真に当然です」

「そうだな。動かざるを得ないな」

 愛の忠言を聞いて、政宗は前を向き、色々と動き始めた。


 予め分かっていたとはいえ、実際にやることは山積しているのだ。

 人類初の月面到達に対する叙勲等、更にそれに伴う式典等の準備。

 更に5人も皇子皇女が産まれた以上、それに伴う予算等の措置も講じねばならない。

 九条内大臣らと協力して、色々とやらねばならないことが、本当に多々ある。

 政宗はそのように考えた。


 さて、その一方で、美子中宮陛下の御出産から人類初の月面到達といった一連の大騒動が一段落した段階で、愛は一旦、自宅の上里清邸に帰っていた。

 何しろ結果的に10時間以上も首相の第一秘書として首相官邸に詰めることになったのだ。

 気が付けば50歳を過ぎている愛は、色々と心身共に疲れ切っており、一休みすることにした。


 帰宅した愛を、家族は出迎えた。

 養子の広橋正之、今では両親と言える上里清夫妻、そして、実の孫にして今では義弟になる上里松一、その4人が愛と同居している。

「疲れただろう。どうする。一旦、眠るか」

「いえ、軽く食べてからにします。落ち着いて食べる余裕もなく、お腹がすいていて」

「そうか。では、食べながら、少し話すか」

 清と愛がそんなやり取りをした後、家族全員が自然と食卓に車座で座っていた。


 それなりに準備が為されていたので、軽食を食べつつ、家族は歓談を始めた。

「それにしても、池田茶々が月面に降りないとはな」

「首相は予期していたようですよ。あの家康や輝政の血を承けた者が、素直に動く筈が無いと」

「政宗が二人には振り回されてきたからな。そういうのも当然か」

 清と愛はやり取りをして、それを聞いた他の面々は笑った。


 他にも四方山話をした後、愛は義弟にして実の孫の松一に問いかけた。

「弟妹には逢いに行くの」

「ええ、実の兄妹からも誘われていますし」

 愛の問いに、松一は即答した。


「本当に5人も産まれるとは想わなかった、貴方も身を慎まないといけないわね。何れは今上陛下の兄になるのだから」

「そう言われれば」

 実の祖母の愛の言葉に、松一は改めて現実に気づいた。

 何れはだが、自分は今上陛下の兄になるのだ。

 本当に身を慎まねばならない。

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 んー皇軍来訪でいろんな常識がぶっ壊されても武家社会のタブーの余燼がくすぶり国民が感じるだろう忌避感を取っ払うのにかなり手間が掛かりそうなやれやれ節な伊達総理のボヤき(^皿^;)しかし、ふたり三人くら…
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