第84章―23
改めて日本国内での話になります。
尚、今上陛下と美子の会話が微妙に不穏なのは、作者の私の性格が悪いから、ということでご寛恕を。
そんな状況に、大日本帝国憲法改正直後の日本国外はあったのだが。
改めて日本国内の改憲成立直後の状況を述べるならば。
「無事に大日本帝国憲法改正が果たされて本当に良かったです」
「その通りだな。これで、入内に心残りは無いか」
「陛下が言ってはならない言葉を聞いた気がしますが」
「そうかな」
今上(後水尾天皇)陛下と鷹司(上里)美子は、それなりどころではない腹に一物を抱えた会話を交わすことになった。
「君臨すれど統治せずです。そうしたことからすれば、中宮として入内する我が身が、改憲に奔走する等はあってはならないことですし、御上が改憲に興味を持ってはなりません」
「そう言いつつ、実際には改憲の為に奔走したのでは」
「私にはそんな覚えが全くありませんが。大日本帝国憲法改正についての貴族院内における働きかけについては、全て(義理の)伯母(の織田(三条)美子)がやったことです」
「見事な言い訳、義理の伯母と姪の間の役割分担が陰ではあった気がするな。実は祖母と孫娘の関係なのではないか。憲法改正を実現させようと、孫の為に祖母が奔走したと装ったのでは」
「私と伯母は義理の関係です。全くの赤の他人です。そう何度も御上にはお伝えした筈です。」
今上陛下と美子は、惚け合った会話を交わした。
だが、二人共に笑いあっている。
そう、これは完全にお互いにとって酷い茶番なのだ。
「まあ、良いだろう。本当に僅か3月で大日本帝国憲法改正が果たされるとは、想わなかったぞ。本当に中宮とするより、首相にしたくなった」
「そこまで言われるとは、私は思いませんでした」
「其方を首相にしたら、世界が震撼するだろう。色々な意味でな」
「余りにも過分な御言葉です」
「自覚が無いのが、却って怖ろしいな」
二人の会話は更に深まった。
実際、今上陛下の下には、公表されている新聞や雑誌等の情報、更に「天皇の忍び」等を介した日本の国内外の非公表情報が、それなりに分析された上で届いている。
そういった情報の殆どが、今回の日本の改憲について、ここまで速やかに成立するとは、と驚異というよりも脅威を覚えていると伝えている。
実際、改憲は憲法を知る者程、本当に大変なことであるのを熟知しているのだ。
そうした面々になる程、幾ら従前から問題になっていたとはいえ、実質は3か月で憲法が改正される等、更にはそれを30歳そこそこの女性が中心になって遂行した等、本当に脅威を覚えて当然のことだ、と自分も考えざるを得ない。
だが、自分の目の前の女性、鷹司(上里)美子はそれを普通にやったといってよいのであり、更に言えば、それが何でもないことのように、自らを韜晦している。
自分からすれば、鷹司(上里)美子の義理の伯母になる織田(三条)美子を凌ぐ妖怪、真の九尾の狐のようにさえ思えてならない存在だ。
そして、織田(三条)美子の才能は政治面に限られていたのに対し、鷹司(上里)美子の才能は芸術関係にも及んでいる。
実際、文学については古今伝授を伝授された身であり、音楽では様々な楽器に通暁していて、特に琵琶では日本どころか、世界最高の腕を持つと評されている。
更にその容姿だが、(この世界では女性としての盛りを過ぎたと言われる)30歳になったとはいえ、妖艶さを増すばかり、と言っても過言ではない。
鷹司(上里)美子の親と言える七人の男女、上里清夫妻、広橋愛、九条兼孝夫妻、鷹司信房夫妻全員が娘の美子が出家しては、無責任な噂が流れて醜聞塗れになるとして、再婚を勧めたというのも当然だ。
そんな本当に素晴らしい女性と、いよいよ結婚することになるのだな。
そんなことにまで、今上(後水尾天皇)陛下は想いを馳せてしまった。
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