第84章―11
そんな感じで、伊達政宗首相と鷹司(上里)美子尚侍の間で、大日本帝国憲法の改正案について、事実上は話がまとまる事態が起きた。
そして、伊達首相は今上(後水尾天皇)陛下に対して、1621年3月中に大日本帝国憲法の改正を行うべきことを進言して、今上陛下は衆議院と貴族院に対して、大日本帝国憲法の改正案の審議を行うべく、国会の召集を行う事態が起きた。
(尚、予算等を審議する通常国会は順調に終了していたことから、臨時国会召集ということになった)
さて、大日本帝国憲法の改正案の審議だが。
まずは衆議院での審議から述べると。
「本当にこのような改憲案が出てくるとはな。それなりに生きて来た甲斐があった」
「そこまで言われますか」
「衆議院の優越は、我が保守党の議員の間でも悲願に近いモノがあった。だが、貴族院が認める筈が無い、更に言えば、近衛前久元太政大臣等との縁から、保守党から「衆議院の優越」を求める改憲案を示しづらいのが現実だった。それが、ひそひそ話ではあるが、あの鷹司(上里)美子尚侍が承認した上で、伊達首相がこの改憲案を提起した、という情報が流れている。この際、保守党も乗るべきだ、と考えるが」
上杉景勝保守党党首は、第一秘書の直江兼続に対して言っていた。
「偉く雄弁ですな。いつもは沈黙を保たれるのに」
「我が保守党は、極論を言えば一人一党だからな。自分からは下手に口を開いて、動くわけにはいかん。周囲にまずは話させて、それに合わせて党の意見を一致させていく必要がある」
「その通りです」
上杉党首と直江の話は(二人にしてみれば珍しく)弾むことになった。
「そして、このような改憲案、我が保守党の衆議院議員の多くにしてみれば、悦んで受け入れたい衆議院の優越を認める案だ。これを労農党の伊達首相の助言から、今上(後水尾天皇)陛下が提案されたモノだからと言って拒絶しては、今後、同じような改憲案を保守党は出せなくなるぞ」
「その通りです」
二人のやり取りは続いた。
「ところで、島津や今川、北条、尼子といった党内の有力者の動きはどうなのだ」
「ほぼ改憲に賛成といった状況のようです。彼らにしても同様で、この改憲案が労農党の提案だから、と反対しては、今後に差し障ると考えているようです」
「そうか」
直江の言葉に、上杉党首は深く肯きながら言った。
「毛利輝元率いる中国保守党は、連立与党の一員だから、当然に改憲案に賛成だな」
上杉党首は、直江に問いかけ、直江は無言で肯いた。
「形式的な審議は行われるが、1月も経たずに衆議院は改憲を認めることになるだろうな」
「その通りかと」
既成事実を語るかのように、上杉党首は呟き、直江はそれを肯定する言葉を発した。
「話は変わるが、鷹司(上里)美子尚侍が、この改憲で奔走しているそうだな」
「そう噂が流れております」
「あれ程の才女、日本の首相にしてみたい、と自分は考えてしまう」
「後、半年も経たぬ内に中宮として入内予定の御方ですが」
「だからこそ、尚更に惜しい。保守党の党首の地位を譲りたい程だ」
「伊達首相が、それを聞いたら、卒倒しそうですな」
「戯言だ。だが、面白い事態が起きそうではないか。尚侍の係累を考える程な」
「仰られる通りですな」
上杉党首と直江の話は、いよいよ弾んだ。
更に言えば。
似たような会話を、中国保守党の毛利輝元党首と、側近の毛利秀元衆議院議員も交わすことになった。
毛利輝元も、そして、秀元も、今回の改憲案に連立与党の一員として賛同する一方で。
この改憲案の裏側で、美子尚侍が奔走したとの噂を聞いて、美子を首相にしたいと言い交わした。
そして、それを伝え聞いた伊達首相は冷や汗を大量にかくことになった。
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