第79章―5
ともかく、そうした背景から、朝鮮半島から南満州の鉄道建設は順調に進んで、更に北満州や沿海州等まで鉄道が敷設され、後5年もすれば、単に鉄路が繋がっただけ、と一部の人は冷笑するだろうが、ポルトガルのリスボンから日本の京の都まで、ユーラシア大陸横断鉄道が事実上はつながる、と世界中の多くの人が考えるようになっていた。
(事実上というのは、それこそ日本の馬関(下関)と朝鮮の釜山間が好例だが、ユーラシア大陸横断鉄道の一部は鉄道連絡船等により、一部の区間が繋がれるのは止むを得ない、と世界の多くの人が考えていたからである。
他にも複数の地点間において、実際に鉄橋やトンネルを掘削するのに苦労して数年に亘って、鉄道連絡船等で代替する事態が起きた)
話が余りにも逸れすぎたので、日本を始めとする対明帝国戦争に関する話に戻るが。
表向きの開戦理由については、明帝国による後金国への挑発行為が看過できない状況にあり、後金国が憤激し、それに日本やモンゴル帝国も同調した、ということになっている。
実際問題として、後金国が成立する前、明帝国は女真族に対して、「分割して統治せよ」と半公然と言っていて、一つの氏族が力を付ければ、別の氏族を応援して潰すようなことを繰り返していた。
後金国が成立した後も、後金国を蛮族として、外交関係の樹立を拒み続けていた。
(これは明帝国と言うか、中華思想からは当然の話で、中華帝国にしてみれば、化外の国は中華帝国に全て朝貢して、その指示に黙って従うのが当然でアリ、それこそ宋のように金に対して兄弟関係を結ぶ等、中華思想的には断じて許されず、宋が中華帝国の一つと称するのはおかしい、という論理が当然になる)
更には、このような状況から、明帝国に対して阿片系麻薬の後金国への流出を取り締まるように、後金国が申し入れをしても、後金国が取り締まるのが当然で、明帝国は取り締まる必要が無い、と言う態度を決して崩そうとしないのだ。
(尚、この点について、日本やモンゴル帝国に対しても、明帝国は同様の主張を振りかざしている。
そもそも、そのような麻薬を買う者を取り締まらない日本やモンゴル帝国が悪い。
それに我が国では薬として合法な品を取り締まれ、というのは蛮夷の知性が無いからだ。
等々と明帝国政府は公然と返答している)
確かに開戦理由としては薄弱ではあるが、このような状況を打破するためには、後金国が明帝国に対して攻め入って、それで解決を図るしかない、と叫ぶのも当然だ、実際に日本も明帝国からの阿片系麻薬の流入が起きている以上、このまま看過は出来ない、と伊達政宗首相が音頭を取って言えば、多くの日本の国民が、首相の言うことはもっともだ、というのが現実だ。
織田信忠海相は、そういった日本の輿論、空気を読んだ上で、対明帝国戦争について、日本、後金国、モンゴル帝国が連携すれば、十二分に勝算は立つこと、その場合の補給体制に問題はないこと、海上補給路は日本海軍が充分に防護できるし、陸上補給路もユーラシア大陸横断鉄道の一部を転用することで、問題は生じないだろうことを、閣議の場で丁寧に説明した。
それを聞いた殆どの閣僚が、ここまでの説明を踏まえて、対明帝国戦争準備に前向きな発言を行うことになった。
実際、ここまでの状況に陥っている以上、最早、戦争以外に対明帝国関係を変える方法は無い、としか言いようが無かった。
余りにも明帝国国の人口は多く、又、攻めるべき土地は色々な意味で攻めるのに困難な土地ではある。
だが、後金国やモンゴル帝国とも連携できる現在が、対明帝国戦争に日本が踏み切るのには、最適のときといえるのも、又、事実だったのだ。
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