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第74章―22

 広橋愛は、更に考えた。

 

 女性の働きやすい職場を、と訴えるだけならば、多くの男性から反感を買うだろうが。

 女性の働きやすい職場は、男性も働きやすい職場になる、というのを訴えるべきだろう。

 

 例えば、それこそ大日本帝国全労連の積極的な活動もあって、1週間の労働時間は48時間が当たり前だったのが、徐々に週休二日制等を導入する職場が増えており、1週間の労働時間は48時間を切る職場が圧倒的に今ではなっている。


 国や地方の公務職場でも、木下内閣時代に土曜日は午前中のみの勤務が導入され、二条内閣時代に隔週での週休二日制が導入された結果、1週間の平均労働時間は42時間になっている。

 民間企業でも、大手を中心に完全週休二日制を導入している企業が増えているのが現実だ。


 そんな風に労働時間が短縮されたのも、女性が少しでも働きやすいようにというのが、職場の背景にあったからだとか。

 何だかんだ言っても、女性の方が体力で男性に劣るのは否定できない。

 長時間過密労働にどちらが耐えられるか、といえばどう考えても男性だろう。


 だが、その一方で、そんな長時間労働が続いては、労働者は疲弊する一方になり、更に自らを磨くこともできなくなってしまう。

 そして、そんな疲弊して、自分を磨かない従業員ばかりになっては、企業であれば徐々に生産性が低下することになる。

 又、公務員も目の前のことを取り敢えずこなせばよい、ということになり、本来の国民の為に働くということが出来なくなってしまう。


 そう言う考えから、労働時間の短縮が進められることになっており、今では大日本帝国全労連の全体スローガンとして、

「全ての労働者の年間労働時間を2000時間以下に」

ということが掲げられるようになっているのだ。


 そんな風に働きやすい環境というのは、男女を問わずに求められるものなのだ。


 そんなことさえ、広橋愛は考えている内に、伊達政宗と宇喜多秀家の話は終わっていて、秀家は自分の事務所に帰って行った。


 秀家の姿が事務所から完全に去ったのを機に、愛は政宗に尋ねた。

「本気で女性の候補者を擁立して、労農党の国会議員の半数を何れは女性にするつもりなのですか」

「本気だ。それこそ女性が外で働くのを、織田家で見せつけられて育ったこともあるしな」

 政宗は少し愛を煙に巻いた。


 実際、政宗が育った織田家は、信長が政界から引退した後は、専ら妻の美子が外で働く一方、夫の信長は家庭内で悠々自適の生活を送って、働かずに余生を過ごしたと言っても過言では無い。

 ちなみに信長が政界を引退したのは50歳前で、そのときに10代だった政宗は、幾ら妻の美子が働いていることもあって、織田家の生活はそれなりに余裕があるとはいえ、伯父は外で働くべきだろう、と内心で批判した程だった。


 更に政宗が、秀家にも明かさなかった本心があった。

 新しい女性議員を、自らの子飼いにして自分の党内基盤を固めようとまで考えていたのだ。

(既述だが)労農党内で自らは主流派、多数派に属しているとはいえ、非主流派もそれなりどころではなくいるのが現実なのだ。


 保守党が「保守合同」を巡る駆け引きで派閥抗争を起こし、「保守合同」が流産したのを、労農党も決して高みの見物ができる状況ではない。

 労農党の議員を更に増やし、労農党単独での政権獲得を目指すと共に、自らの子飼いの議員を増やして、党内基盤を固めることが必要不可欠だ。

 そこまで政宗は考えていた。


 その時の愛は、そこまで政宗の考えが進んでいるとまでは読めなかったが、確かに織田家がそんな家庭だったのを思い起こし、政宗がそういうのも最もだ、と得心した。

 

「分かりました。頑張りましょう」

 愛は政宗にそう言った。

 尚、このことから、後に女性議員の増大から活躍を描いた「小説伊達学校」が著されることに。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 史実世界の1960年代は勿論、1980年代よりマシな労働環境の様な気がします。 [一言] >「分かりました。頑張りましょう」 愛さんの重い一言。多分、歴史に残る言葉。「小説伊達学校」の前…
[良い点]  「分かりました。頑張りましょう」  ( ̄∀ ̄)何気ないひと言ながら愛さんの決意表明にも感じられると思えばめちゃ重いセリフ、続く後書きからメタ読みすれば政宗さんの政策が大当たりするのは政…
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