第74章―5
話中でサービス業という言葉が出てきます。
本来的には、英語が普及していない世界である以上、別の言葉にすべきなのでしょうが、私がネット検索を掛ける限り、適当な他の言葉が見当たりませんでした。
何方か、適当な言葉があれば、柔らかくご教示くださるように平にお願いします。
「この件について、労農党内での意見の取りまとめは、未だに出来ていないので、あくまでも私見という事でお願いします」
伊達政宗は、そう前置きをして事務所内にいる国分盛重を始めとする支持者達に、新幹線計画に関する意見を述べだした。
尚、その内容だが、広橋愛もその内容を予め熟知している。
何故なら、政宗は広橋愛を有権者の一人と見立てて意見を言い、愛はそれに対して様々な反論を行うということで、意見の内容を政宗は更に深めたからである。
「まず、最初に私が考えるのは奥羽間の鉄道網建設が、昨今の現状からは優先されるべきということです。これは新幹線計画に反対する訳ではありません。あくまでも優先順位の問題です。更に言えば、将来的には新幹線がこの陸前県を始めとする奥羽一帯でも運行されるようにすべきである、と私は考えます。ともかく現在の奥羽(東北)地方では、鉄道路線が充実しておらず、南北に通じる鉄道は、それこそ陸奥県の青森市まで太平洋側からも日本海側からも通じるようになりましたが、東西に通じる鉄道の整備はまだまだと言って良い有様です」
(史実名で言えば、この世界では陸羽東線と北上線は完成していますが、仙山線や田沢湖線等は未だに計画、未着工段階の状態です)
政宗は、そこで一息入れた。
「他にも太平洋沿岸部に沿った鉄道網も充実させるべきである、と私は考えております。そうしたことを行うことによって、陸前県の農林水産業を始めとする第一次産業、更には工業を中心とする第二次産業を発展させ、商業やサービス業といった第三次産業にも効果を波及させていく。それによって、陸前県を発展させていく必要があります」
(史実名で言えば、この世界では三陸鉄道等は未だに計画、未着工段階なのです)
政宗の更なる言葉に、その場にいる多くの者が肯いた。
「ともかく、こういった鉄道網をまずは完成させることが優先されるべきです。新幹線計画をやるな、とは決して申しません。どちらを優先させるのか、新幹線建設よりも地域の鉄道網整備の方が遥かに優先されるべきだ、と私は考えます。有権者の皆様に、そう政宗は申していた、と伝え広めて下さい」
政宗は、一旦、それで自らの考えを締めくくった。
「そうだ。それこそが妥当な考えだ」
政宗の言葉が終わった後、国分盛重が、まずは政宗に賛同する声を挙げ、その場にいた他の支持者達も相次いで賛同の声を挙げた。
実際、陸前県の有権者の大半が、政宗とほぼ同様の考えと言って良かった。
新幹線建設は確かに日本の鉄道技術の精華を、全世界に示す代物になるだろう。
だが、だからといって、その為に陸前県内の鉄道整備が遅れるというのは困る。
まずは陸前県内の鉄道網を整備してほしい。
政宗はそういった空気を察しており、それを踏まえた意見を述べ、支持者達も賛同した次第だった。
その一方で、広橋愛は政宗の言葉に肯きながら、別のことを考えていた。
あくまでも、これは政宗の私見であって、労農党の意見では無いのよね。
実際、この世界では伊達政宗の身内といえる宇喜多秀家(幼い頃に史実同様に実父の宇喜多直家が病死したことから、この世界では織田信長夫妻が後見人になって成長していた。そのために一時だが、政宗と秀家は一つ屋根の下で育ったのだ)は、備前、美作選挙区から労農党所属の衆議院議員になっているのだが。
宇喜多秀家は、私見として、新幹線建設推進の意見を述べて、選挙区で演説等をしている筈だ。
それこそ労農党は党内意見の集約をしていないのか、と叩かれそうだが。
そんなことを言いだしたら、保守党だっていい勝負だ。
一枚岩なのは中国保守党くらいだろう。
広橋愛は、そんなことを考えた。
実際問題として、新たな鉄道や道路の建設利権というのは、現実でもそうですが、地元への利益誘導として極めて効果的で、伊達政宗や他のこの世界の政治家にしても、そう否定できない話なのです。
(選挙後の利害調整の末に、地元には、それなりの言い訳が為されるのですが、選挙時では最初から鉄道や道路は地元には不要と言えない現実が)
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