第10章ー6
「本艦は探照灯を照射する。敵の目を全て本艦に引き付けるのだ」
朝鮮軍が対馬上陸を果たした翌日の夜、皇軍、日本海軍の第2水雷戦隊は、対馬に接近を果たしていた。
そして、第2水雷戦隊司令官である田中頼三提督は、上記のような命令を下した。
夜間見張員の観察によれば、あの先に朝鮮水軍(海軍)の軍船が集結している筈だ。
更に、その傍には朝鮮陸軍の将兵が上陸を果たしていて、夜間の休息を取っている筈だ。
なお、この日の夜、対馬にいる日本陸軍は上陸してきた朝鮮軍への攻撃を控えている。
何故かと言うと、万が一の日本海軍の誤射による損害を警戒したからだ。
そのために、却って朝鮮軍の警戒心を高めてはいたが、だからといって、日本海軍の夜襲、更にその規模は完全に朝鮮軍の想定を超えている代物だった。
第2水雷戦隊の旗艦「神通」から探照灯の光が、朝鮮水軍に対して浴びせられる。
これまでに浴びたことのない、強烈な光の洗礼は、朝鮮水軍に大きな動揺を与えた。
「あの光を出している船は何者だ」
慌てて停泊していた軍船を動かそうとする等、朝鮮水軍は動き出そうとするが。
第2水雷戦隊の艦船にしてみれば、「神通」の探照灯は、朝鮮水軍の軍船を相次いで照らし出していた。
そして、その情景を見、「神通」の指揮下にある各駆逐艦では。
「ヨシ、敵艦に対して砲雷撃戦開始」
駆逐艦「雪風」においては、飛田健二郎中佐が命令を下し。
また、他の駆逐艦「黒潮」、「親潮」、「早潮」、「夏潮」、「初風」、「天津風」、「時津風」も同様に朝鮮水軍に対する容赦のない砲雷撃戦を開始した。
勿論、「神通」も砲雷撃戦を展開している。
更に。
「ぜい沢極まりない話だが、帝国海軍の誇る酸素魚雷の威力を試す、いい機会だな」
飛田中佐は、「雪風」に装備されている魚雷の、朝鮮水軍に対する全力一斉射を下令した。
そう、今、魚雷を発射しないと、二度と魚雷を使うことはないだろう。
所詮は木造船に過ぎない朝鮮水軍の艦船に対して、93式魚雷を使う等、魚雷の威力を考える程、ぜい沢極まりない話としか、言いようが無い話だが。
そうかといって、今、魚雷を使わないと、このまま宝の持ち腐れになりかねない。
ほぼ停まっていた朝鮮水軍の艦船に対して、魚雷を外すような技量の持ち主は、日本海軍にはいない。
「雪風」の発射した魚雷は、朝鮮水軍の艦船を容赦なく貫き、大爆発を引き起こした。
そして、「雪風」以外の駆逐艦や「神通」が発射した魚雷も、相次いで朝鮮水軍の艦船に命中して、大被害を与えていった。
だが、第2水雷戦隊は、まだまだ容赦というものをしなかった。
「各艦、魚雷の次発装填準備を速やかにせよ。準備完了次第、次発を放て」
田中提督は、下令した。
田中提督自身、正直に言って、鶏を割くに焉んぞ牛刀を用いん、の攻撃だと思っている。
だが、この時を逃せば、敵艦に対して、魚雷を発射する機会は二度と得られないし。
また、不当に日本の領土に対する攻撃を行って来た敵に対する攻撃だ、という想いからも、全力攻撃を自ら志向せざるを得なかったのだ。
そして、第2水雷戦隊は、全ての魚雷を撃ち尽くした。
朝鮮水軍の艦船は、魚雷の直撃を受けて、相次いで、それこそ火柱を挙げて吹き飛んだ、といっても過言では無い被害を被っていった。
魚雷の直撃を免れて生き残った朝鮮水軍の艦船に対しても、容赦のない砲撃が第2水雷戦隊の各艦から浴びせられて、相次いで炎上していった。
第2水雷戦隊の攻撃が完了して、第2水雷戦隊が戦場を去った後、対馬の海岸に健在で航行可能な朝鮮水軍の艦船は1隻も残っていない、と言っても良い惨状を呈していた。
翌朝、朝鮮軍の将帥は呆然とせざるを得なかった。
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